
10月25日、日本ビール検定(通称:ビア検定)2級を受験した。
結果は73点。合格ラインである70点を辛うじてクリアし、無事に合格を掴み取ることができた。費用を抑え、勉強時間も最小限に抑えた結果、計画としては「成功」の基準を満たしたものの、わずか3点という薄氷の勝利である。仕事であれば「危うい管理体制」と言わざるを得ない。
しかし、今回の受験を終えて改めて自分の「資格取得の歴史」を振り返ったとき、この泥臭い合格は私の自己啓発の歩みにおいてはきわめて必然的だと言える。
23年間にわたる自己投資の変遷
私の資格取得の原点は、IT業界に入社した2003年にさかのぼる。
入社直後にシステムエンジニアとして必須とされる基本情報技術者を取得し、翌年には応用情報技術者(当時のソフトウェア開発技術者)をクリアした。
その後、高度試験である「ネットワークスペシャリスト(合格率約14%)」に挑んだ。ちょうど当時担当していた案件の関連で、ネットワークをより深く勉強する必要に迫られていたからだ。高度試験でありながら「論文がない」という試験形式の特性もあり、この試験には幸いにも合格できたが、そのときに読んでいた参考書から一つの気づきを得た。満点を取る必要はない。知っておくべき内容を正しく理解していれば合格できる、という本質的な必勝パターンを、私はここで掴んだ。
しかし、そこから先は一筋縄ではいかず、ITサービスマネジメントの「論文試験」という壁に何度も跳ね返され、一時停滞を余儀なくされた。
大きな転機となったのは2013年だ。社会人10年目という節目を迎え、私は「これから先を考えるなら、苦手意識のある分野の克服に挑むのは早いに越したことはない。」と考えた。また「仕事だけが人生ではない、これからの人生をより豊かにするには、趣味の分野でも学びを深めていったほうがよい」という考えを抱くようになった。
この決意のもと、まずはビジネスの共通言語を学ぶべく「簿記2級(合格率約15〜30%)」を取得すると同時に、完全に趣味の領域である「城郭検定2級(平均合格率約73.6%)」にも合格した。
さらに、学生時代から強い苦手意識を持っていた英語の勉強にもこの年からメスを入れた。初受験時のTOEICスコアは335点。そこから「苦手だったことに本気で取り組んでみたい」という内発的な動機に基づき、地道に管理を継続した結果、最終的には785点までスコアを伸ばすことに成功した。
ここから私の自己啓発は、仕事のための「外発的な動機」から、人生を豊かにするための「内発的な動機」へとグラデーションのように広がり始める。
その後も、2020年には法務知識の刷新として国家資格である「貸金業務取扱主任者(2020年度合格率:33.9%)」に合格。2023年には食の管理・第一弾として「パンシェルジュ検定2級(合格率約65%)」を取得。そして直近の1年では、昨年12月にG検定(合格率約65〜70%)、今年7月にはマイクロソフトのAzure Fundamentals(難易度・低)に合格し、技術の最新動向への追従も忘れていない。
私の20有余年は、常に「学ぶこと」を習慣として人生に組み込むプロセスの連続だったのだ
あえて「100%の趣味」に試験勉強の枠組みを課す
今回、満を持して挑んだのが「ビア検定2級」である。
単に「ビールが好きだから飲む」という消費行動だけで終わらせることもできたはずだが、私はただ「ビールが好き」という今の現状を変えたかった。
以前に取得したパンシェルジュ検定がまさにそうだった。製法や歴史を体系的に学ぶことで、それまで知らなかったパンのすばらしさや深みを知ることができ、日常の食卓が何倍も豊かになった。ビールも同じであるはずだ。知識という枠組みを通すことで、ただ漫然と消費するだけではなく、ビールの本当の良さを知ることができる。そして何より、今後の飲み会などの席でも、今まで以上にもっとビールを楽しむことができるはずだ、と考えた。
体系化されたテキストと対峙し、合格という目標に向けて「勉強」というプロセスを経ることで、ビールに対する解像度を劇的に変える。パンの時と同じく、製法や原材料、歴史や文化の文脈を学ぶことで、知識は強固な「線」へとつながっていく。
ちなみに、今回の調達費用は徹底的に最適化した。公式テキストは去年メルカリを活用して中古で購入(1,500円)。また演習の質を担保するため、公式サイトの「ビア検一問一答公式問題集」も購入した(1,500円)。問題演習による振り返りと改善を回すことこそ、私の必勝パターンだからだ。
スコアから見る「仮説と検証」:本番で露呈したエラー
そうして迎えた10月25日の本番。テストセンターのパソコン画面を読み進めながら、私は冷や汗をかいていた。
合格後に開示された分野別の正答率データが、そのときの私の戦況を実に見事に物語っている。
- 1.基本・原料:76.4%
- 2.製法・スタイル:86.2%
- 3.歴史:59.0%
- 4.文化・飲み方:79.1%
- 5.雑学:37.5%
「テキストや問題集にあった内容」はおおむね得点できていた。特に製法・スタイルに関しては8割を超え、私の勉強戦略の正しさを証明してくれた。
しかし、計算の外にあったのは「雑学(正答率37.5%)」や「最新の情報に基づく問い」である。この領域に関してはまったく歯が立たず、さっぱり分からない未知の問題を突きつけられた感覚だった。
さらに、焦りに拍車をかけたのが「余裕の削りすぎ」だ。テキストの表に記載があったことは記憶していても、その詳細な数値や中身までは暗記が届いていなかった。「あそこにあった表だ」と頭に浮かぶのに、最後の一歩が引き出せない。試験中、「まさかここまで覚えるべきだったか……」という後悔が頭をよぎり、足元がすくわれるような焦燥感に襲われた。
2級の合格率40~42%。3級の合格率は90%前後なので格差がすごいな、とは思っていたのだがここまでテキストに載っていない問題が多いのか。。。2026年度にテキストが改訂されていたが中古で購入したテキストが古かったことも、苦戦の原因の一つだろう。

諦めと、1回キリの挑戦に込めた想い
全100問を解き終わった時点で、画面のタイマーは20分以上の残時間を表示していた。
想像以上に難しい問題が多く、手応えから考えて「今回の合格は厳しいかもしれない」という諦めの気持ちが心を満たしていく。しかし、見直したい問題は特にない。答えを知らない未知の問題は、いくら時間をかけて粘ったところで結果は変わらないからだ。
私は意を決して、画面の「終了」ボタンをクリックした。
一瞬の静寂の後、画面に結果が突きつけられる。
「73点 合格」
その文字を見た瞬間、張り詰めていた糸が解け、激しい安堵感が押し寄せた。
本当に、良かった。テキスト代、問題集、受験費用(5,800円)を合わせれば、1万円近い出費である。合格したところで何か具体的なメリットがあるわけではない。当然、給料が上がることもなければ、仕事にプラスになることもない。
それでも、私は「形」に残したかったのだ。
一通り勉強したことでビールに対する基礎知識は十分に身についた。だから、もし不合格だったとしても、もう1回チャレンジすることはなかっただろう。これは最初から「1回キリの挑戦」と決めていた計画だった。だからこそ、自分の投じた時間と費用、走らせたプロセスを「合格」という明確な事実として残したかった。そんな思いが頭を駆け巡っていた。
今回の学びと次なる管理
3級との安全策を試験費用のために捨て、2級一本釣りに絞った結果、本番での余裕はわずか3点となった。もしこれで落ちていたら後悔してもしきれなかっただろう。過去問の周囲に広がる詳細部分への目配りの甘さは、今後の資格試験の際への教訓として少し注意を払いたい。
しかし、費用対効果という面だけで捉え直せば、このギリギリの合格こそがベストの数値だったとも言える。
ネットワークスペシャリストの時に得た教訓通り、資格試験において満点を取る必要は一切ない。合格ラインさえ超えれば得られる権利は同じだ。不必要な余剰エネルギーを注ぎ込まず、最小限の投資で合格をもぎ取ったという意味では、結果だけ見れば何一つ文句のつけようがない。
解像度の上がった世界で、新たに「ビール」の資格が私の経歴に加わった事事実。
仕事のための勉強が「義務としての更新」であるならば、趣味のための勉強は「人生の解像度を上げるための自己啓発」だ。今後はこの知識を単なる脳内データで終わらせるのではなく、日々の「健康管理(適切な休肝日の設定と、飲むべき1本の厳選)」、そして「お小遣い家計簿の予算管理」と調和させながら、さらなる生活設計の最適化を図っていきたい。
まずは今夜、これまでの23年の歩みと、新たな趣味の門出を祝し、徹底的に調べて選び抜いた最高の一本で乾杯することにする。もちろん、明日のパフォーマンスに響かない程度に、だ。


