値段を下げることは目的ではない

お金をマネジメント
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引越しやリフォームをする場合、複数業者に見積りを依頼(相見積り)して金額の妥当性を判断したほうが良い、と進めるサイトは多い。

必要以上に高い金額を支払うことのないための防衛措置の意味もある。確かに同じ価値を得られるならば支払うお金は安いに越したことはない。相場が分かっていれば相見積りしなくても金額の妥当性を判断できる。食料品や日用品などは定価があるので、定価の何割引きと聞けばお得感がわかる。転売を除けば定価以上の値段で売られることもない。しかし引越しやリフォームには価格の根拠に専門的な情報が入ってくる。また、利用する機会も多くないので一つの業者から説明を聞くだけでは良く分からない。

ただ、複数の業者とそれぞれ見積りの打合せをするのは時間がかかるし、その都度部屋を片付けたりするのは結構大変だ。相見積りを取った後で価格交渉をしようものなら、慣れない交渉事は心理面でも負担になる。それにいくら安い方が良いと思っても、品質が悪ければ長い面で損をすることもある。相見積りを取ったところで、それだけでは本当の意味での妥当性は分からないのだ。

それならネットなどでざっくりとした相場感と、その業者の評判や実績などを確認しておいて、あとは見積時に信頼に足る業者かどうかを判断すれば十分ではないか。とにかく安く、ということならそれなりに負担とリスクがあることを覚悟して突き進んでもよいが、妥当性を判断して納得感を得たいというだけであれば、無理に相見積りをとる事はないと思っている。

よほどの悪徳業者でなければ、それぞれの業者にもプロとしての責任やプライドがある。また、人間だれしも情があれば、承認欲求もある。そのため「安さ」の追求は相手のプライドを傷つけることにもなるし、安さ相応の仕事しか期待できなくなってしまう。それよりも、金額がある程度妥当であれば、無理な価格交渉をするよりも相手を信頼して任せる、という意思をちゃんと示した方が良い。当日飲み物を差し入れするとか、感謝の言葉を述べるといった気遣いをして、情を持ってもらえば自ずと品質も向上する。好意を持って接すれば、好意で返してくれるものなのだ。

窓断熱リフォームを依頼した

『住宅省エネ2023キャンペーン』をご存じだろうか。

住宅省エネ2023キャンペーン」は、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、家庭部門の省エネを強力に推進するため、住宅の断熱性の向上や高効率給湯器の導入等の住宅省エネ化を支援する新たに創設された3つの補助事業の総称です。

https://jutaku-shoene2023.mlit.go.jp/about/

このうち「先進的窓リノベ事業」は、住宅の窓を断熱窓にリフォームすることで経済産業省・環境省から総額1,000億円(申請あたり最大200万円)まで補助金が支払われる。交付申請期間は2023年3月31日から予算上限に達するまでだ。

窓は壁と比べて熱が伝わりやすいので、断熱窓に交換することで冷暖房の効率があがる光熱費を抑える効果があるらしい。それもあって、2030年にエネルギー期限のCO2排出量を2013年対比53.3%削減を目標に掲げている国が、多額の補助金を出してまで住宅のエコ化を進めている。

我が家もご多分に漏れず、夏は暑く冬は寒い。特に冬は窓の結露がひどくカビが発生する原因にもなっているので、以前から何とかしたいと思っていた。また2階にある嫁と私の仕事部屋にも大きな窓があるため冬はとても冷える。雨戸を閉めてもほとんど効果がない。真夏は2階に熱がこもるので、クーラーをフル活用しなければ生きていけない。いつかは断熱リフォームが必要だと思っていたところに、今なら補助金がでるということを知った。そこでLIXILのホームページからおすすめ業者に見積りを依頼することにした。

リフォーム業者からの説明では、政府のキャンペーンは開始して約2ヵ月で補助金申請額は25%程度ながら、リフォームの工事が終わらないと申請ができず、また断熱窓の納期が遅れているため、補助金が支給されるかどうか確約できない、ということだった。

2回目の打ち合わせで見積の提示があり、太窓3枚、小窓4枚、浴室窓1枚と工事費を含めて合計約50万円かかるが、補助金が下りれば40万円近くも戻ってくる、という説明があった。作業費が10万円程度なので、窓の費用はほぼ補助金で賄える、ということだ。あまり宣伝されていないキャンペーンではあるが、お得感が半端ないため問い合わせがひっきりなしに来ているらしい。

見積明細を見ると、各窓の費用=定価×割引率0.48で算出されていた。この割引率は業者によって変わってくるのだが、ネットで見る限りは50%弱というのは一般的な数字だった。それでも工事費含めて交渉の余地はあったかもしれないのだが、今回は価格交渉はせずにすぐに着工してもらうようお願いした。仮に値下げしてもらったところで数千円レベルだろうし、再見積りによって契約が遅れれば補助金の申請が間に合わなくなる可能性もある。また、金額の妥当性が分からないのに値下げを要請するのも、依頼する側としての責任に欠ける。仕事でも根拠の弱い主張をするのはとても辛いことだ。それなら金額の妥当性と業者の信頼感を確認して、あとは一日も早く着工したほうが良い。

大事なのは「値段」ではなく「安心感」と「納得感」

新規システムの構築やシステム更改の予算を上席に承認してもらう場合、必ず複数案の比較検討結果を提示する。その際の評価軸は「一時コスト」だけではなく「費用対効果」「運用コスト」「体制」「品質」「納期」やその他特殊事情などがあり、それぞれでメリット・デメリットを整理して説明する。

複数案を提示しても、上席にどの案が良いかを選んでもらうわけではない。たいていは提案する側としてベストな案は決まっている。その案を採用することによって得られる効果と必要なコストが妥当であり、他の案よりも優れいていることを説明するためにレビューを受けるのだ。一時コストが安くても費用対効果が悪いなど、本来の目的を十分に達成することが出来なければ選択肢にはなり得ない。また、予算枠が決まっている案件であれば、その予算に収めるための制約やデメリット・リスクも説明し、合意を得る。上席に納得してもらえなければ承認を得られず、再レビューとなることもある。いくら自信がある案であっても、承認者に納得・安心してもらわなければ先には進めない。レビューはそのための儀式なのだ。

自宅のリフォームと会社でのシステム構築は目的も予算規模も全く異なるが、ある程度中長期的に使用するモノにお金を払うときの考え方は同じだと思っている。それらは家屋や会社の価値を高めるための投資だからだ。日用品や食料品であれば、定価や相場、メーカーや産地といった情報で、購入前に金額や品質の妥当性を予測して購入するかどうかを判断すればいい。例え期待値を下回ったとしても、金額が低ければ損害も限定的だ。だが、投資をする際は「値段」だけで判断してはいけない。期待した効果を得続けるることが出来るかどうかが一番大切なことで、トラブルや不具合が発生することがないか、仮に発生した時に十分なフォローをしてもらえるかどうかが「値段」以上に重要だ。

厳密にいえば、リスクの重要性評価の話になってくる。リスクが顕在化した時の損害によって対処方法(受容・軽減・転嫁・回避)は変わるしコストも変わる。だが結局は「納得・安心」できるかどうかに落ち着くのだ。

自宅のリフォームはすでに契約を済ませ、半額の前金も支払った。今のところは業者の対応にも金額にも納得しているので、値引きできたかも、といったモヤモヤ感はすぐに気にならなくなるだろう。決して安い金額ではないが、これから先の夏の暑さ・冬の寒さによる辛さが軽減するのならその効果はプライスレスだ。

あとは補助金の予算が残っているうちに工事が完了することを、切に祈るばかりだ。といっても家屋の価値を高める工事にかかる費用そのものにも納得しているので、補助金が出たらラッキーだ、と思って納期確定を待ちたい。補助金申請に間に合わなかったとしても、断熱窓を設置する価値にはなんら変わりはないのだから。

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