7月に異動した人の引継不足が尾を引いている。いや、むしろ状況は危機的に悪化した。
交代要員がメンタルに支障をきたす
前述の記事で触れたとおり、Bさんの異動に伴って6月から交代要員としてCさんが着任した。だが、そのCさんは8月7日から一週間、自社命令で強制的に休暇を取る事態となった。
BさんとCさんのチームを管理するリーダはとても頭が良く、テンポよくテキパキと仕事を進めていく。その反面、そのスピードについていけないメンバーへのあたりが厳しく言葉もキツイので、そのリーダ配下ではメンタルに支障をきたして異動や帰社するメンバが後を絶たない。5月に退社したAさんもそのリーダ配下で苦しんでいた。
そのためCさんが着任する際、Cさんの出向元は別チーム(私のチーム)配下を強く希望していたらしいが、他案件の状況もあってそれは叶わなかった。そして着任から2ヵ月間、Bさんには仕様の分からないシステムの更改、原因不明の処理遅延の対応から各システムの問い合わせまで、様々な対応を強いられることとなった。残業時間は2ヵ月連続で80時間近くに及んでおり、ストレスで夜中に目が覚めたり、土日もリラックスして休めないことが多かったという。
そういった状況が出向元の耳に入り、Cさんの上司が即座に出向先の部長席に以下の申入れがあった。
・8月7日から1週間、Cさんは休ませる。
・8月10日までにCさんの状況を改善する手立てをとらなければ、他の出向者も全員帰任させる。
Cさんはこの状況でも「あまり事を大きくしたくはなかった。グループ長や他のチームメンバに迷惑をかけて申し訳ない」と言っていた。だが話を聞く限り、出向先ではだれもこの状況にブレーキをかけられないので、出向元の判断は適切だろう。確かにいきなり1週間休暇となれば、案件やシステム運行の状況はさらに悪化する。だがここで強制的にでもCさんの状況を変えなければ、さらに長期間の休職が必要となり、最悪の場合はCさんのこれからの人生にすら悪影響を及ぼしかねない。
すべてが悪い方に転がっている
実はCさんの出向元からの状況改善の要望は7月末にもあった。だがタイミング悪く、グループ長は8月第一週は夏季休暇だったので、グループのメンバには「体制の変更を予定している」という連絡にとどまり、具体的な体制変更がなされることはなかった。
その要望を受けたあと、グループ長から私に「いくつかのシステムや案件を私のチームで見てほしい」というやんわりとした打診はあった。その打診は了承したのだが、グループ全体への具体的な説明もない中では、どこから手をつければよいかも分からない。また、私も8月半ばは夏季休暇をとるので、新体制を回し始めるのはそのあとになると考えていた。おそらくグループ長も同じ考えだったのだろう。だが想像以上にCさんを取り巻く状況は悪く、出向元の動きも早かった。
グループ長は休み明け早々、Cさんと直接会話することも出来ずにこの問題に対処しなくてはならない。しかも私は途中で夏季休暇に入るので、案件を引き継いですぐに対処することもできない。部長席も順番に休暇にはいる。だが問い合わせ対応や案件は待ってはくれない。5月のAさんの退社から始まり、悪いことが最悪のタイミングで立て続けに発生しており、負のスパイラルから抜け出せていない。
2人減って補充は1人という人手が全くなりない。リーダからのパワハラによるパフォーマンスの更なる低下。引継ぎ・ノウハウ継承不足により案件進捗の遅延。処理遅延やトラブルによる問い合わせが多発し、各担当への負担増加。さらにはチーム内、グループ内の関係悪化。間の悪い夏季休暇による対処の遅れ。
私もこれまで数々の案件を担当し、困難な状況も経験してきたが、ここまで悪い事が重なることもそうある事ではない。
決して「運が悪い」で片づけてはいけない
リーダのマネジメントに問題があることは誰もが分かっていたはずなのに、対処をリーダ本人やメンバ個々に任せては改善するわけがない。プロパー社員に対して対応が甘かったと責められても仕方がない。人手不足についても、追加要望は出していたらしいが増員の緊急度・重要性をただしく認識していたら、状況か変わっていたかもしれない。引継不足も、引継担当だけの問題ではなく、管理者側が適切に対処すれば避けられていた可能性は高い。やはり、出向先である事業会社の管理職層、特にグループ長の責任は重いと言わざるを得ない。
また、雰囲気づくり、というのも大事なのだろう。忙しく困難な課題が山積みであっても、前向きにお互いを思いやり、一つの目的のために一丸となって事に当たることができる現場は強い。良し悪しに関わらず情報が共有され、皆が自発的にできることをする。困ったときに助け合うことができれば、状況が悪化する前に火消もできる。その結果「ギリギリでなんとかなった」「最悪の事態は避けられた」ということが良く起こる。
今、Cさんとそのリーダを取り巻く状況はこれとは全く逆だ。「運が悪かった」というのは言い訳に過ぎない。出来る管理職は、その運すら呼び込むためのマネジメントをしなければならない。