ジェネレーションギャップとバイアス

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ジェネレーションギャップを実感した話。

会社で「デザイン思考」の研修があった。デザイン思考とは、前例のない課題や未知の問題に対して最適な解決を図るための思考法で、分かりやすく言えばPDCA(計画→実行→評価→見直し)ではなく、Try and Error(挑戦と失敗の繰り返し)で物事を進める、ということ。

その中で講師が、バイアスを意識することが重要、と言っていた。バイアスとは「偏見」や「先入観」のこと。各々で環境や経験が異なるのだから、物事の考え方や価値観も多様。今までの「常識」や「正解」が自分の思い込みだったということがあり、新しいアイデアを考え出す際には「バイアス」が邪魔をする。

研修はオンラインで、1グループ5~6人が講師の説明を受けた後、アイデアだしのトレーニングを行った。最終的には発散させたアイデアを一つの新しいサービス提案にまとめて、パワポを使ってプレゼンをする。1回3時間、3週にわたる合計3日間の研修だった。

研修の中で、プレゼンはまず聞き手を引きつけるて話を聞いてもらうことが大事、という説明があった。講師は研修で「News Zero」のオープニング曲を流して寸劇まで見せてくれた。

2日目が終わり、ある程度アイデアがまとまったのでプレゼン資料にとりかかる。グループで1つのパワポを作成するが、各メンバーは各々別の仕事をもっているので、長時間確保して共同作業をするのは難しい。ということで、いったん各自で5枚程度の超たたき台資料を作って、3日目の研修の間に1時間打ち合わせ、そこで皆の資料のいいとこどりをする、ということにした。

私も仕事の空き時間で作業に取り掛かる。講師のプレゼン例を参考に何よりインパクトを重視した結果、私の資料はネットで拾ってきたドラゴンボールの画像やセリフがあふれたものになった。

「願いを言え(神龍)」
「クリリンのことかー(悟空)」
「戦闘力たったの5か・・・ゴミだな(バーザック)」
「初めてですよ…ここまで私をコケにしたおバカさん達は…(フリーザ)」

過去の名言、印象的なシーンが満載でインパクトは満点だ。限られた時間のなかでは満足の出来。こういうときは在宅勤務が便利だ、周りの目を気にする必要がない。グループのメンバの評価も上々で、結局プレゼン資料は私のたたき台と、もう一人のSPY×FAMILYのアーニャの画像を使った資料を組み合わせてまとめていくことになった。研修とはいえ、楽しい作業だ。

しかし研修メンバーは40代は私だけで、あとは30代~20代の若手が中心。女性も3人いた。研修3日目、最後の1時間で資料の修正とプレゼン練習をする際に、メンバーの一人(女性)が質問してきた。

「この恐竜が願いをかなえてくれるんですか?」
「スカウターって何ですか?」

恐竜って、神龍(シェンロン)のことかー!?

神龍やスカウターは知らなかったが、プレゼン資料としてはなんとなく面白かったので賛同したらしい。言われてみれば20代はドラゴンボール世代ではない。最近はアニメの再放送や新作映画など、新たにドラゴンボールがメディアに取り上げられることもあるけれど、ジャンプ黄金期と比べればその扱いは全く違う。当時の子供はドラゴンボールがすべて、といっても言い過ぎではなかった。「神龍(ドラゴンボールを7個集めると現れ、願いを何でも叶えてくれるドラゴン)」や「スカウター(相手の戦闘能力を数値化するための道具)」は私世代は知っていて当然なのに、プレゼンを聞く側はそうではない。これはまさにジェネレーションギャップというやつか。そして今回の研修という場にジェネレーションギャップが存在し、自分の当たり前は周りにとって当たり前ではなかった。自分が面白いと思うのだから見た人皆が楽しめるだろう、というバイアスがそこに存在した。

セミナーや勉強会を聞いたり自己啓発本を読むだけでは、分かったような気になっているだけで実際は理解できていないことがある。久々に自らアウトプットする研修に参加して、デザイン思考の知識以外にもいろいろと気づきと刺激を得る機会になった。40代でこういった研修に参加する機会が減ってきているので、何かあれば次も積極的に手を上げようと思う。

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