食べ順ダイエットについて思うこと

健康をマネジメント
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数年前から注目され始め、今やその地位を確立して半ば常識にもなりつつある「食べ順ダイエット(ベジファースト)」。食べる量を減らす必要はなく、炭水化物よりも野菜を先に食べるだけで良いという。程度や効果の差はあれど会社の食堂や外食チェーン、コンビニ弁当であっても日々の食事に取り入れることが出来るため、ダイエット中でなくても食べ順を気にする人は増えてきている。

私も40歳前後に新陳代謝の低下が気になりだしてからは、まず箸をつけるのはサラダや味噌汁、野菜中心のおかずからだ。そしてそのあとメインの肉料理、最後に白ご飯と、もはや無意識に食べ順が習慣化されている。

だが実際、この食べ順ダイエットは本当に効果があるのだろうか。確かにネットやテレビでは多くの医者やインフルエンサーが食べ順ダイエットを推奨しているし、いくつか研究・調査結果の裏付けも見かけた。だがそれらのほとんどが「食べ順によって血糖値の急な上昇を抑えられる」という医学・科学的な現象であり「食べ順によって痩せられる、痩せられた」というものではない。

血糖値とはその名の通り血液中の糖分の量だ。摂取した糖分は体の各機能を維持するために、血液によって体中に運ばれる。この時、運ばれた糖分のほとんどは筋肉や内臓で消費されるが、その量が過剰で使い切れなければ、余った糖分は脂肪として蓄えに回る。蓄えた脂肪は体内で糖分が不足すれば再び消費に回るが、消費されることのない脂肪は肝臓を始めとして体のあちこちに蓄積されていく。これが「太る」メカニズムだ。

当然、摂取する糖分が多いほど血液中の糖分=血糖値も上がるため必然的に太りやすくなる。また血糖値が急激に上がれば使い切れない糖分が増えて、脂肪として蓄えに回る量も増えていく。逆に言えば、同じ量の糖分を摂取しても血液に吸収される量が少なければ太りにくいということになる。

食物繊維は小腸での糖質の吸収速度を遅くする効果があるため、ご飯やパンといった炭水化物よりも海藻やサラダを先に摂取することで、血糖値の急上昇を抑えることが出来る。またタンパク質も消化に時間がかかるため、炭水化物に比べれば血糖値は上がりにくい。

さらに、食物繊維やタンパク質といった、消化に時間がかかるものを先に食べることで満腹感や満足感が増し、過食を防ぐ効果もある。ゆっくりとよく噛んで食べればダイエットの効果はさらに高まる。

ざっと調べた限り、食べ順ダイエットの根拠はこんなところだ。

実際のところ、血糖値の上昇で太るのか

野菜⇒タンパク質⇒炭水化物の順で食事をした場合、血糖値の急上昇を抑える効果があることは確か”らしい”。だが元々の血糖値や糖代謝の量によっては食べ順ダイエットの効果は個人差があるし、食べ順を気にした自分とそうしなかった自分を同時に比較することはできない。またダイエット目的に食べ順を意識している人の多くは、そもそも糖質やカロリーの摂取量を気にすることが多いだろう。食べ順を買えたから痩せた、という確固たる証拠はどこにもない。

血糖値どうこうよりも、摂取量を減らせば痩せるのは当然だ。一日に消費するカロリー以上に摂取すれば蓄えに回って太りやすいし、摂取量を抑えれば蓄えた脂肪は減っていく。もちろん生活スタイルや年齢、筋肉量によって個人差もあるだろうが、最終的にはただの足し算・引き算だ。血糖値や、血液が体中に運ぶ糖分の量、また内臓や筋肉における消費量・蓄えなんて、実際に目に見ることはできない。ただ「それらしい」理論によって「それらしい」気分にさせられているだけではないだろうか。

ただ、食後の眠気の変化に関してはすぐに実感ができる。血糖値が急激に上昇した後、その反動で低血糖状態になって強い眠気に襲われる。短時間で駆け込むように食べたり、必要以上にお腹いっぱいになると眠くなるので、午後からの仕事の能率があがらない、という人も多いだろう。普段から睡眠不足にならないよう生活リズムに気をつけたり、また昼食後に10~15分か仮眠をとれば状況は改善されるのだが、食事の量を腹八分目にするだけ食後の眠気は全く変わる。

白ご飯の量が調節できるのなら、その量を半分に減らしてみると効果は歴然だ。そして少ない量のご飯をしっかりと味わい、よく噛んで食べる。そうすることで満足度も増すし、満腹感も得られる。サラダやタンパク質といった消化に時間がかかる料理を先に食べることの意味もそこにある。つまりは、血糖値や食べ順の仕組みが重要なのではなく、糖分の摂取量を減らしながらも満足な食事をすることが、仕事のパフォーマンスアップや、ひいてはダイエットに繋がるのだ。

    食べ順より大事なこと

    どこかの中学校で「給食にふりかけを持参」することの是非が問題になった、というニュースがあった。小・中学生は育ちざかりであり、栄養が不足すれば身長や筋肉量にも影響があるため、給食における栄養バランスや量は栄養士管理のもとで細かく決められているという。ただ年齢や体格によって食べられる量には個人差があり、また給食時間の短さや、おかずの内容によっては、決められた量の給食を食べきれない子供もいる。そのためふりかけを持参することで、少しでも給食を食べやすくして、廃棄を減らす効果を期待している、とのこと。

    このニュースを読んで思ったのが、食べ順は、本来の食事のおいしさ・楽しさを損なってはいないか?ということだ。食べ順ダイエットでは白ご飯を食べるのは最後だ。おかずはすでに食べ終わっていては、白ご飯だけを食べることになる。もちろん美味しいお米はそれだけで美味しいが、普通の飲食店や一般家庭の白ご飯は普通のお米であることが多く、食べ順を守って一番最後に食べる白ご飯はすでに冷めている。食事は出来たてが、ご飯は炊き立てが一番美味しい。にも拘わらず、ダイエットや健康を意識しすぎる事で、食事のおいしさ・楽しみを犠牲にしているのだ。

    実際私も白ご飯を食べる際はふりかけを使用することが多いため、最近は塩分摂取量も少し気になり始めた。会席料理やコース料理であれば、それぞれの料理を最適なタイミング・順番で出してくれる。だが食堂や家庭の食事においては、食べ順は気にしすぎないほうが良いと思う。効果は眉唾物だし、食事は栄養摂取のためだけではない。美味しい食事を楽しむことこそが一番大事なのだ。

    食べ順ダイエットをするなら、サラダや海藻類を最初によく噛んで食べるまでで十分だ。そのあとは、食べ順はあまり気にせずに食べたい順番でおかずと白ご飯を食べればよい。ただこの時、ゆっくりとよく噛んで味わって食べることと、腹八分目を意識することのほうが食べ順よりもずっと重要だ。

    流されずにシンプルに

    ネットやテレビではさまざなダイエット法、健康法が紹介されている。どれもそれなりに効果がありそうだが、本当に効果があるかは分からない。食べすぎれば太るし、睡眠や運動量が不足すれば体力や健康に害があるのは当たり前だ。よく分からない事に振り回されてはいけない。大切なことは常に単純でシンプルだ。人の意見やニュース・話題に流される前に、立ち止まって何が大切か、どうあるべきかを考えてみる必要があるのだろう。

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