社員証紛失事件

仕事をマネジメント
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会社では社員証を常に携帯している。ビルに入る際には警備員に社員証を見せる必要があるし、オフィスの入り口ではドア横のリーダに社員証をタッチして開錠する仕組みだ。自分のパソコンは顔認証だが、会議室でパソコンを使用する場合は社員証をリーダーに差し込まなければならない。

ロッカーや自席キャビネのカギも社員証のストラップに一緒に留めている。オフィスで使用するものをひとまとめにしておけば管理が楽だ。そして退社時は社員証をストラップごと、通勤カバンのチャック付きの外ポケットに保管すると決めている。しまった場所を忘れてしまったり、他の荷物と一緒に出し入れすると紛失のリスクがあるので、出来るだけシンプルに管理することにしている。

そのため、これまで社員証を紛失するどころか、一時的に見失うといったこともなかった。

社員証が外ポケットに入っていない

事件(というほど大げさな話ではないが)が起こったのは、ある日の午後のことだ。その日は午後から成人病検診があったので、午前中は出社してそのあと病院に直行した。検診の後は、体調や業務状況によって在宅勤務に切り替える予定だった。

検診が終わった午後3時ごろ、パン屋で昼食を購入した。いつもは財布はカバンの内ポケットに入れているが、カバンを背負ったままだと内ポケットが開けられない。そのため一時的に社員証を入れている外ポケットに入れようとチャックを開けた時、そこにあるはずの社員証とストラップがなかった。

退社時に社員証をカバンに入れた記憶はなかったが、半ば無意識にやっている行為なので、入れていないとも言い切れない。ストラップに付けている鍵でロッカーを開錠したので、少なくともロッカー室まで社員証を持っていたことは確実だ。だがそのあと空になったロッカーにはカギはかけないので、なにかの拍子でロッカーの中に社員証を置いたままにしたことは考えられなくはない。ロッカー室内やビル内で落とした、という可能性もある。社員証がなくてもロッカー室は出られるし、警備員もとくに咎めはしない。

もしオフィスビル内で落としたのなら、誰かが警備員に届けて、そこから私に連絡が来るだろう。しかしその時点で会社からの着信はなかったので、ビル内で落としたわけではないか、まだ誰にも見つけられていないのか。

病院で健診着に着替える際に落としたか、最悪の場合はビル外で路上に落としたのかもしれない。その場合は警察に届けるなど必要があるし、事が大きくなっていく。退社後にカバンの外ポケットを開けることは考えにくく、可能性は低いのだが最悪のケースとして想定しておかなければならない。

社員証発見

それでも一番可能性が高いのはオフィスビル内、とくにロッカー室だ。昼から健康診断でオフィスにはいないことになっているが、戻って確認せざるを得ない。もし見つからなければ上司にも警察にも報告しなければいけないので、次の日に出社してから確認する、というわけにはいかない。

警備員は毎日顔を合わせているし、事情を話せば通してくれるかと淡い期待をしたが、「誰かに迎えに来てもらってください」と冷たくあしらわれてしまった。警備員も仕事なので、知った顔だからスルーできるわけではないのだろう。仕方なく同僚に連絡し、身元保証をしてもらって入館した。

そして少し緊張しながらロッカー室に行く。ひょっとしたらそのあたりに落ちているかもしれないので、途中の廊下を見回してみたがなにも見当たらない。そしてロッカー室に入り、自分のロッカーを見た瞬間、力が抜けた。

ロッカーのカギ穴に、鍵が刺さったままになっていたのだ。そして社員証、ストラップが情けなくぶら下がっていた。鍵を開けて荷物を取り出す際、鍵の抜き忘れてそのままにしていたらしい。そして昼過ぎのロッカー室は人の出入りが少ないので、誰も気づかなかったのだろう。または気づいても、本人が取りに来ると思ってそのままにしておいたのかもしれない。とにかく無事に社員証が見つかって一安心だ。

次の日は7時に出社して本番確認をする予定だったので、オフィスの近くで社員証を忘れたことに気づけたのは運が良かった。外で財布を出すこと自体が稀であり、外ポケットに入れようとしたことも偶然だった。もしこのタイミングで気づかなければ、朝7時に会社についても中に入れない。誰にも迎えに来てもらえないので、さらにややこしい事態になっていたかもしれない。

間違った初動と反省

今回は結局、同僚一人に少し迷惑をかけた程度で済んだ。だが後から考えると、私の行動にはいくつか問題がある。本来はまず、紛失が疑われた時点で上司に報告すべきだ。きっと大丈夫だろうと楽観的に考え、また報告やそのあとの手続き等を手間だと思って報告義務を怠った。

社員証には顔写真がついているが、ストラップを首から下げて社員証を携帯している素振りを見せれば、写真と本人が一致しない事に警備員が気づくのは稀だろう。入館できればオフィスフロアやサーバ室にも入ることが出来る。その気になればパソコンを持ち出すことも出来るかもしれない。また社員証が路上に落ちていたら、その会社の信用も疑われかねない。他にもなにか悪用される可能性もゼロではない。

たかが社員証なので、よっぽど会社内部の環境に詳しい人でなければ、実際に悪用されることはないだろう。だが一時的とはいえ会社から貸与された身分証明証を紛失したにも関わらず、正常性バイアスによって楽観視し「きっと大丈夫」と自己判断して上司に報告をしなかったことは反省しなければならない。

同様に、わずらわしさを避けるために警備員を半ば強行突破しようとしたのもマズいことだ。これもまた、警備員の対応次第では事件になっていた可能性だってある。私の軽率な行動によって上司や同僚にさらに迷惑をかけたかもしれない。私自身の信用も大きく傷ついたことだろう。

機密情報や個人情報のはいったカバンや社用パソコン、社用スマホを紛失すれば、それは大事件だ。そして私が実際にそういった状況に置かれたとき、今回と同様に楽観視して報告が遅れるとそれは致命的な結果になりかねない。社員証と違ってパソコンやスマホだったら適切に対処できた、と言い切ることはできない。それこそなんの根拠もない、ただの自信過剰だ。

事件から学ぶこと

今回の事件は、私自身にも少なからず事なかれ主義の部分があり、緊急時に適切な行動がとれないかもしれない、と自認する良い機会となった。「私はできる、大丈夫だ」と思っていても、その状況になってみて初めて自分が分かることは多い。

根拠のない自信は危険であり、だからこそ何事にも練習や訓練が必要なのだ。

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