案件が終わったら振り返る

組織をマネジメント
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今週、一つの更改案件が本番を迎えた。まだいくつかの課題は残っているが、新システムは今のところ機嫌よく稼働してくれているのでもう旧システムに戻すことはないだろう。先週、その案件でPMを務めたメンバーから「本番準備でいくつか課題が出てきてベンダや関係者が騒いでいる」と相談を受けた際は本番切替の延期が頭をよぎったが、うまく調整ができて事なきを得た。

また切替翌日に一部の部署から「新システムに接続できない」と相談があり、調査したところネットワーク設定の漏れが見つかり、担当ベンダに作業を発注しなければならいことが判明した。幸いにも案件予算に少しあまりがあるのでこちらも何とかなりそうだ。一カ月以内には設定追加できる見込みなので、旧システムの停止までに対応できれば問題ない。

うまくいったことを、ラッキーで片づけない

今回の案件もそうだが、これまでの経験において「ギリギリ」で何とかなることは多い。

遡れば私が20代のころ、当時はオープン系システムの開発リーダーをしていた。そして大規模な帳票の改修案件では、カットオーバーの1か月前までは膨大な数の不具合が出ていた。帳票の印字ずれや特定の文言が出力されないなど、プログラムを修正しては帳票を印刷して突合を繰り替えす日々だった。今ならおそらく、その時点でマネジメント層に報告して本番延期の決断をするような状況だった。

だが、当時はリスク管理が十分に機能しておらず、私も上司から「大丈夫か?」と聞かれたら「はい、何とかなります」と答えていた。そこに確固たる裏付けがあったわけではないが、感覚的に何とかなると思っていて、そして結果的に何とかなった。いくつかカットオーバー後に不具合修正もしたが、大事には至らなかった。うまくいったから良かったものの、少し歯車が狂えば大炎上しかねない案件だった。「マネジメントができてない」「リーダーとして責任を果たしていない」と責められても言い逃れはできなかっただろう。まさに綱渡りのような日々だった。

手探りで進めざる得ない案件は、往々にこうしたことがある。

「システムの利用者が多岐にわたる」「データのパターンが多い」「元のシステムが古くドキュメントが残っていない」「システム構築時のメンバーがいない」といった複雑な案件は難易度が高く特に、進捗に応じていくつもの考慮漏れが出てくる。そしてその都度プロジェクトメンバで対応を協議し、解決していく。時間があればそれだけ解決手段も増えるので、タスクに組み込んで粛々と片づけていけばいい。だが中には緊急性が高く重要な対応が漏れており、万全な対策をとることができずにリスクを認識つつ先に進む、という選択をすることもある。最悪が起こる可能性は高くはないが、もし起こったらどうやって対処すべきか困る、という類だ。

今回の更改案件でも、いくつかそういった選択をせざるを得なかったが、良い方に転んで事なきを得た。ただ、綱渡りがいつも良い方に転ぶとは限らない。いつか火を噴くこともありえるのだ。だから、案件が無事に終わったからと言って、そういった考慮漏れや後手に回った対応を「運が良かった」で終わらせてはいけない。ギリギリの成功を糧にして、次に生かさなければならない。

終わったことを振り返る

案件のリリースが完了しても、対処すべき課題が残っていることは多い。リリース後にトラブルや問い合わせなどが多発したらその対応にも追われることになる。また、月次バッチ処理などがあれば、それらの稼働確認も続いていくため、キレイさっぱりとプロジェクトが終わる、ということはほとんどない。そしてズルズルと残課題の対応をしているうちに、次のプロジェクトが始まって頭はそっちにシフトしていく。

そうなる前に、無理やりにでも静止点をつくって振り返りをやった方が良い。打ち上げでお互いの苦労をねぎらうことも大切だが、それよりも「ギリギリ」でうまくいったことをヒヤリハットとして、本来ならどうすべきだったかを関係者であらためて評価・検討することが重要だ。その時点では、とにかく前に進めることに重きを置いて、課題の深堀りは後回しになっている。そういった課題をそのままにしてはいけない。ラッキーで片づけて何もななばなければ、次に類似の課題が再発した時はラッキーでは済まない。

定例会の枠があるうちに、30分でも良いから意見を述べ合い共有し、必要なら再発防止策に落とし込むまでやっておきたい。そうすればプロジェクトの財産となるし、作ったシステムとは別の価値を関係者にもたらしてくれる。なによりプロジェクトメンバーの成長に繋がることが大きい。メンバーの成長は会社としてのかけがえのない資産となる。

振り返りは個人でもできる。マスタスケジュールを見返して、どのタイミングでどういった失敗や日在ハットがあったのかを、パソコンのエクセルやメモ帳、または手持ちの手帳に書いていく。そして客観的に見て、自分が本来どうすればよかったのかを考える。自分ひとりで振り返っても効果はあるが、できればそのあと上席や先輩、プロジェクトメンバーと共有し答え合わせをしてみるとさらに効果的だ。そういった振り返りから得た気づきは、今後の類似のプロジェクトだけではなく、仕事以外の人生の助けになる。

終わったことを「良かったね」だけで片づけてはいけない。せっかくプロジェクトで得た経験なのだから、そのあとひと手間加えるだけで、その価値は何倍にも変わってくる。そして仕事だけでなく、人生にも価値をもたらしてくれるに違いない。

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