ウクライナ侵攻を終わらせるには

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ウクライナ侵攻から1年

2月24日でロシアのウクライナ侵攻から1年経つ。ここまで長引いたことは、プーチン大統領にとっては想定外のことだろう。私は専門家ではないのて偏った情報と主観で話をするが、戦争を始めるときに大事なことはどう終わらせるか、つまりは出口戦略だ。振り上げたこぶしをどこで降ろすのか。ウクライナ侵攻でいえば、新ロシア派の住民が多い地区まで支配下に置ければよく、ウクライナ全土をロシア化することまでは考えていないなかったと思う。ウクライナの本来の軍事力だけを見れば不可能ではないかもしれなが、ロシアとしても戦争が終わった後に世界から完全に孤立するような状況になるのは本意ではない。

天然ガスや石油などの資源、小麦などの農作物の世界的な輸出国であり、広大な国土を持つロシアではあるが、ロシア国内だけで経済を回すことは難しい。中国やベラルーシなどの親ロシアの国々との貿易だけでは限界がある。1億5千万人もの自国民を養っていくことは可能かもしれないが、今の時代、それだけではロシア国民を満たすことはできないだろう。経済的発展、裕福な暮らし、娯楽、おいしい食べ物、戦争前にできたことの多くが、この戦争中によって制限されるようになった。いくらプーチン大統領に権限があり、またカリスマ性や人気があったとしても、この戦争の正当性がロシアにあると訴えても、何千万人が不満の声を上げれば国は傾く。

それは戦争前からプーチン大統領自身もわかっていただろうし、適当なところで戦争を終わりたかったと思う。しかし計算が狂ったのはウクライナのゼレンスキー大統領の外交・発信力だ。タレント出身なだけあって、訴える力には長けていたのだろう。ヨーロッパ諸国だけでなく世界中の国々に対して支援を呼びかける。首脳陣だけでなく各国の世論に働きかけ、継続的かつ大量の情報・食料・生活必需品・資金の提供を受けることに成功した。近頃では戦車や長距離ミサイルまで手に入れている。戦争はウクライナで起きているが、実態はロシア vs 反ロシアの国々、という様相だ。冷戦下でのベトナム戦争や朝鮮戦争と同様に、民主主義諸国と社会主義諸国の代理戦争と同様の構図になってしまった。

戦争を終わらせたい

各国首脳は、できるだけ矢面に立たないよう慎重にウクライナを支援してきた。それはやはり、どうやってこの戦争を終わらせるかを常に考えているからだ。どれだけウクライナに支援を続けても、この1年間でロシアがウクライナから奪った領土すべてを取り返すことは難しい。ましてやゼレンスキー大統領やウクライナの世論が訴えているような、2014年にロシアが併合したクリミア半島を奪還することはもはや夢の話だ。もちろん全世界が総力をもってロシアを攻めれば不可能ではないが、それこそ第三次世界大戦の幕開けだ。今はウクライナ内でとどまっている戦火が飛び火することは、各国は断固として回避したいだろう。ウクライナより自国の安定、国民の安全が最優先だ。そこまでウクライナに肩入れはできないし、ロシアを攻める理由ないので世論の支持も得られない。またロシアを刺激しすぎれば核のリスクが高まり、自国の安全を脅かす。

すべての国が、この戦争を終わらせたがっている。1年間も戦争を続けたことで、たくさんの命が失われた。コロナ禍で低迷した経済の回復にも影響を与えている。実のことろ、各国はウクライナを支援している場合ではない。にもかかわらず本来であれば自国民のために使いたい資金や資源を、ウクライナに提供せざるを得ない状況になっている。しかしゼレンスキー大統領もプーチン大統領も、すでに出口戦略を見失っているように見える。戦争を終わらせるための外交が機能していない。

それでも終わらない

ウクライナ国民の多数が戦争継続を望んでいるという。ウクライナ国民のロシアに対する鬱憤が溜まっていたのかもしれない。ゼレンスキー大統領の発信力・影響力によって、ウクライナ世論のナショナリズムがこれまでになく高まったことも理由に挙げられる。そんな世論を前にして、奪われた領土の奪還をあきらめて戦争を終わらせる、なんて決断は至難の業だろう。ゼレンスキー大統領が「もう戦争をやめたい」と言えば、各国が全力で終戦のための調整に動くのだが、彼ももう引き返せないところまで来ているのではないだろうか。

これは太平洋戦争時の日本と同じだ。当時、日本の世論の多くがアメリカとの戦争を望んでいた。生成に見れば国力の差は歴然で、正面からぶつかれば勝つ見込みなど万に一つもなかった。それにも関わらず、都合のよいことばかりを信じ、日本国土が戦場になるとは考えず、戦争を回避しようとすれば弱腰外交と非難され、内閣支持率の低下につながる。そういった状況を軍部がうまく利用して日本は軍国主義に傾倒していった。一部の軍人・政治家だけでなく、世論を形成していた日本人一人ひとりにも戦争責任はあった。

でも、世論とは、民衆とはそういうものだ。目先の利益、身の安全が大事なのだ。国民皆が常に長期的かつ広い視野を持っているわけではない。10年後の未来より、今日その日の幸せが優先だ。感情に流されることもあるだろう。だからこそ選挙があるのだ。知識・経験・判断力に優れた政治家が全国民の代表として選挙でえらばれ、国を長期的に良い方向へ導くためのかじ取りをしていく。政治家にはそれだけの責任がある。そしてその長たる存在が、首相であり大統領だ。彼らは世論を意識しながらも、時に世論から支持を得られない判断をする必要がある。民主主義とはいいながら政治的判断は多数決ではない。多数決で決めたことが最善・最良であるならば議員はいらず、実務を担う官僚がいれば事足りる。

ゼレンスキー大統領は、決断しなければいけない

だからこそこの戦争を終わらせるには、ゼレンスキー大統領に期待するしかない。ロシアは大国であるがゆえに、プーチン大統領は一定の成果を得られなければウクライナから手を引くことは難しい。攻撃し、勝って強国であることを示すことが政権を維持することに繋がっている面もある。ここで手を引くのはプーチン大統領の失脚を意味する。よほどロシア内でプーチンの立場が悪くなり、革命でも起きない限りはロシアが終戦を決断することはないだろう。

ゼレンスキー大統領も政治家であり、どういった形で終わることがベターかを常に考えていると思う。でもウクライナ国民の皆が納得できるゴールには到達しえない。それは国民よりも大統領にはよくわかっているはずだ。それでもここで戦争は終わらせなければならない。どこかの国がこの戦争に直接介入し始めたら、それは世界の終りのカウントダウンを意味する。そうなれば泥沼だ。そうなる前に、たとえ国民の多数から非難され、ゼレンスキー大統領が失脚することになるとしても、妥協して終戦にむけて舵を切ってほしい。

ベストな選択肢はわからないが、このままウクライナやロシアの兵士たち、そして多くの一般人の苦しみが続いていいわけがない。ゼレンスキー大統領は、各国に戦争継続のための援助ではなく、終戦に向けた協力を申し入れてほしい。各国首脳も、援助されてそれを断れる状況ではないが、終戦に向けた協力には喜んで応じるはずだ。

このまま戦争を続けることは、10年後、20年後のウクライナをより良くすることにはつながらない。ゼレンスキー大統領は、決断しなければならない。

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