飛び込んでみたら何とかなるもんだ

組織をマネジメント
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夏季休暇明けからチーム体制が変わり、別チームのパワハラリーダーの担当案件とメンバー1名が私のチームにやってきた。異動者の引継ぎの甘さや人手不足の問題ごと私のチームに取り込んだので一時はかなり混沌とした状況が訪れたのだが、1カ月半経ってようやく落ち着いてきたので振り返っておきたい。

まずはメンバーのメンタルケアから

新体制になって、まずは新たに加わったメンバーに話を聞くことから始めた。彼が6月に着任してから何度か面談はしていたが、一緒に仕事をするのは初めてだったので、彼の能力や仕事のスタイルを正しく把握しておかないと適材適所のマネジメントができない。また、彼は前のチームでのパワハラや、案件・問い合わせ・トラブルの集中によるオーバーワークで心身共に疲弊しており、明らかにパフォーマンスが低下していたので、そこから立て直さなければならない。

異動や離職で減った要員の補充がない中では、今いるメンバーが各々で最大限の成果を出さなければ、この状況を乗り越えることはできないのだ。そのためには、私のチームでの心理的・肉体的安全性を保障して、本来の能力を発揮できる状況を作ることが重要だった。私は出向先で彼の評価をする立場にはないし、彼の出向元に掛け合うような権限もないので、雑談に近い形でただ話を聞くだけだ。だがそれでも状況を共有し共感すれば、新チームで安心感を与えることが出来る。彼にとってはそれが一番必要なことだった。

彼は50歳を迎えたベテランであり、私と同様にIT黎明期を乗り越えてきている。仕事に対する責任感や自己解決する能力は十分に備わっていて、若手のように一つ一つ細かい指示を与える必要はない。ただ話を聞いていると「周りに迷惑をかけてはいけない」という思いが強すぎて、一人でなんでも抱え込みすぎてしまう面もあることが分かった。そのためチャットやメールで押し寄せた問い合わせを処理しきれずに溜めてしまい、その状況において前のリーダーからの指示や依頼事よりも目の前の問い合わせ対応を優先したことが、パワハラまがいの言動を引き起こしてしまっていたようだ。

出向元では、問い合わせや各タスクは一つずつ丁寧に処理すればよかったのだろう。だが事業会社のシステム部門には日々、社内外から多種多様な問い合わせが大量にやってくる。人手不足の今の状況では、すべてを順番に処理していってはいくら時間があっても足りない。だがそれぞれ緊急度・優先度は様々なので、実はすぐに対処しなくても何とかなるものも多い。問い合わせ先が間違っていて、正しい問い合わせ先を回答するだけでよい場合もあるし、内容によってはしばらく放置したって問題にはならない。問い合わせはしたものの、自分でリトライしたり周りに聞いて自己解決することも多いのだ。

時間に余裕があったり経験を積んですぐに判断・回答ができるのなら発生順に問い合わせを処理してもかまわないのだが、今はその状況ではない。出向してまだ3か月の彼にはまだその判断をする経験・知識が不足している。そのため私が次にやるべきことは、彼がタスクを一人で抱え込まない状況・仕組み作りだ。それが彼の心理面での安心・安全を保障することにもつながるはずだ。

タスクの発生と進捗を共有する

彼はよくある問い合わせや依頼作業は一通り習得していて、その類は問題なく処理できる。あとは慣れない作業や案件推進に関して停滞することがないよう、いくつかルールを決めた。

個人チャットで来た即断できない問い合わせがあれば、まず私ともう一人のメンバーをチャットに追加してもらう。他のメンバに迷惑をかけないよう自力で解決しようとすることが、結果的に問い合わせの滞留と遅延に繋がり、問い合わせ元だけでなく他のメンバに迷惑をかけてしまうことをあらためて説明し、理解してもらった。

そして、当面は問い合わせや質問を重点的に対応し、システムや社内・社外への理解をより深めて経験値を積むことを優先してもらうことにした。人手が限られている中で、独力で進められる作業は最大限彼のパフォーマンスを発揮してもらう。それだけではチーム内のタスクを処理しきれないので、いくつか小規模の案件もアサインするが、すべて副担当をつけて2人で作業を進められるようにする。

あとは、元々週1回チーム会を開いて各タスクの進捗確認をしていたが、それに加えて新たに私が所管することになったシステム周りについてより詳細に状況確認と優先順位付けをする会議体を設けた。その会議はあえて対面形式とし、機械的な進捗確認ではなく、雑談を加えて各メンバの表情を観察することを主目的とした。停滞しているタスクや困りごとを共有し、交通整理をしてあげれば、未解決・未着手のタスクに悩んでパフォーマンスが低下することを防ぐことが出来る。少しずつ経験が増えていけば、自ずと自信もついてくるだろう。

更改案件の立て直しは自ら

ラスボスは12月に本番を迎える更改案件の立て直しだ。3月に案件は着手していたものの、途中でこちらの担当者の異動と引継不足があったため、進捗がまったく管理できていない状況にあった。未回答のQAが積み残っており、アプリベンダと基盤ベンダのコミュニケーションも取れていない。マスタースケジュールも、各ベンダが参加する進捗報告会もない。プロジェクトメンバは各々バラバラに動いて、お互いに協力しようという意識がまったくない。そして各ベンダは、クセのある人ばかりでなかなかに手ごわい。

この案件を6月から新規着任者に任せようとしたのだから、無謀と言わざるを得ない。

本来なら私や他のメンバーが彼を手厚くサポートして、元の体制のままでプロジェクトを立て直したいところだ。だが状況を正しく把握できているメンバが誰もおらず、また残り期間も短いことから、私がPMとして体制を引き直すしかなかった。この状況において、PMがボトルネックになるわけにはいかない。彼には私をサポートしてもらう中で、事業会社でのプロジェクトの推進方法やベンダコントロールのノウハウを学んでもらうことにした。

ベンダに発注して以降、部長席への基本計画の説明はしておらず、計画の承認を得ることなくプロジェクトが進んでいたことも問題だった。そもそも基本計画書が存在していない。ただ各ベンダからは要件書や計画書、設計書は納品されていて、また5年前に更改した時の資料が残っていたので情報は一通りそろっていた。あとは資料をひたすら読み漁り、また各ベンダへの確認をするなかで基本計画書にまとめ直していく。そうすることで、プロジェクトの状況がある程度把握できてきた。各ベンダは各々の作業を着実に進めていて、状況はそこまで悪くはない。いくつか止まっているタスクもあったが、まだ十分にリカバリは可能だ。

体制立て直しから3週間後、部長席に基本計画を説明し、無事に承認を得ることが出来た。突貫で作成したつたない資料と説明だったが、この案件を取り巻く状況を部長席も理解していたので、大目に見てもらった感もある。この後もテスト計画、移行計画を順次まとめて承認を得る必要があるので気は抜けないが、とにかく前に進むことはできた。

大事なのはコミュニケーション

チーム運営、プロジェクト運営ともに、やはり大事なのはコミュニケーションだ。リーダとメンバ、PMとベンダ同士、お互いにコミュニケーションをとって理解を深めなければ適切な運営はできない。現場が混乱しているときはなおさらだ。目の前に積みあがった課題を闇雲に片づけようとしてもリーダ、PM一人でなんとかなるわけがない。状況を整理し周りと共有し、タスクを分担して各々の役割に注力できる場を作り、状況を管理して交通整理をしてやれば、あとは自然と回っていくものなのだ。

夏休み明けに訪れた混沌に私自身も不安いっぱいだったが、今はもう光が差し始めている。のど元を過ぎると暑さを忘れてしまうので、備忘録も兼ねて振り返ってみた。

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