異次元の少子化対策とはなにか

政治と経済をマネジメント
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岸田首相が2023年の年頭記者会見で今年の優先課題として「異次元の少子化対策」に取り組むと表明した。

少子化で起こること

2022年の出生数が80万人を割り込み見込みで、日本の人口減少は加速していくばかり。このままだと日本という国が持たない。人口が減るということは、消費者も減るしサービスの担い手も減るということ。我々は日々多様なサービスを享受して生活している。病院や娯楽施設もそうだが、日常の買い物だってスーパーで働いている人がいなければ成り立たない。道路や水道、電線などの生活インフラも劣化するので定期的なメンテナンスが必要だ。スマホやインターネットも、通信を安定させるために誰かがどこかで働いている。

そういったサービスの担い手が不足するとどうなるか。コンビニやファストフードショップが24時間営業できなくなるのは序の口だ。定休日のあるスーパーも増えてくるだろうし、宅急便だって土日は届かなくなるかもしれない。過疎地は道の舗装・修繕がされず、地震や豪雨などの災害があっても復旧されるのに時間がかかる。老朽化した橋や公園の遊具も修理・修繕は後回し、もしくは今後のメンテナンスも考えて撤去するかもしれない。役所や公共施設の統合・集約も進むから、郊外や田舎での暮らしが成り立たなくなってくる。スマホのアンテナだってメンテナンスが必要なので田舎でスマホが使えないということも起こりえる。自然と都市部への集中が加速していき、地方は観光業などに特化した一部のみが生き残る。

あと20~30年もすればそういった未来がやってくることは想像に難くない。

何ができるのか

ロボットの導入による省力化、定年の延長、外国人労働者の受け入れ、移民の促進はあくまで現状を少しでもマシにするための対策で、これだけでは真綿で首を締める様なもの。一時的に労働生産性を高め労働力を確保すれば、今の中高年はまだ今の生活スタイルを維持できるかもしれない。しかし子供が生まれ、人口が増えなければ日本は確実に衰退する。それはたとえ移民を全面的に認めたとしても同じことだ。

子育て世代への手当の給付、出産一時金の引き上げ、給食や高校の学費無償化は、それ自体は意味はある。目の前の生活の負担軽減につながるので、日々の生きていくための助けにはなる。だがこれらの支援策によって子供が増えるかと言えば、効果はかなり限定的だろう。子供が欲しくても経済的な理由で諦めていた夫婦が月2万円のおかげで子供を産む選択をする、という安易な問題ではない。少子化はいろいろな要因が絡んでいて、本質をおさえないといけない。

原因と対策

1977年にニューヨークで3日間に及び大規模な停電が発生した際、9か月後にベビーブームが起きたという。また、日本でも戦後にベビーブームが起きている。そしてインドやアフリカ諸国では今も人口が増加していて、先日世界人口が80億人を超えた。出生率が高くまた医療品質向上で生存率が上がったことが理由の一つだが、これによって教育格差・貧困の問題も発生している。また、先進国はどこも少子化の傾向にある。

私は、少子化の一番の要因は「娯楽が増えすぎたこと」ではないかと思っている。要はインターネットだ。ブログやSNS、youtubeやNetflixなどの動画配信サービスもあって、各コンテンツを消費するには時間がどれだけあっても足りない。提供される情報量が多する。インターネット回線の帯域が拡大し、高速通信サービスの広がりとあわせてスマホも普及した。娯楽やサービスの入り口はいつでもポケットの中にある。そしてこういった娯楽は人同士のつながりを希薄にした。インターネットを介した広く浅いつながりが広がって、人と人とが深く交流する機会を奪った。

その結果「交際」や「結婚」をしなくてもそれなりに楽しく生きていける世界が出来上がってしまった。もちろん「結婚」は強要されるものでもないし義務でもない。「結婚」によって自由が損なわれることもあるし、不幸になる人もいるので、ここで良し悪しを語るつもりはない。ただ、この状況を何とかしなければ、どんな政策を打っても少子化は止まらない。

企業努力、小手先の政策では抜本的解決は望めない。ずっと言われていたことだが、早く手を打たないとどうにもならない。岸田首相の言うようにな「異次元の少子化対策」はずっと前から必要だと言われている。しかし有権者は目の前の自分の生活が大切なので、様々なサービスの質を落としてでも少子化対策をする、ということが受け入れにくい。結果的に政治家も将来のための政策ではなく、有権者の身近な課題の解決を優先する。

ここはやはり、トップダウンで有権者も身を切るような政策が必要だ。

デザイン思考で考えてみる

今回の岸田総理の発言をうけて「財源はどうするのか、無責任だ」などの発言も聞こえてくるが、順番が逆だ。もちろん予算がないと何もできない。でも財源を確保してから実行しようとするから「5000円を配る」のような小粒で効果がほとんど見込めない対策しかでてこない。

ここはデザイン思考で考えるべきだ。「何ができるか」ではなく「ゴールは何で、そのために何をすべきか」を考えよう。ここまでくると、バランスをとって万民が納得するような対策なんてない。高齢者や高所得者からの不満がでて当然の、偏った政策・対策を打ち出さないと効果がでない。権利・人権保護といった前提ですら制約になりうる。

私は専門家ではないので、サラリーマンの戯言に過ぎないのだが、例えば「結婚」を選択する人を増やすために「結婚」しないと不利益を被る社会にしてはどうだろうか。結婚したら10年間は一定の控除を受けられ、その後子供が生まれれば、子供が成人するまでは控除率も上がっていく。こんな世界を仮定したときに何が起こるのか、いくら必要なのか、課題を洗い出して一つずつ解決していく。すべて解決はできないから当然不平不満は出るだろうし仮に少子化に歯止めがかかっても弊害がでることもある。

でもそういったマイナス面ばかりを考えていては、結局はなにも変わらない。岸田総理や今の政治家にこういったバランスを欠いた判断ができるとは思えないが「異次元」というからには素人が考えつかないような、あえてバランスを欠いた効果的な政策を期待したい。

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