効率を求めて時間に追われる

旅行をマネジメント
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インターネットの普及によって大きく変わったことの一つが旅行だ。

今や日本全国、どこの旅館・ホテルであってもインターネットでの予約が基本だ。稀にネットで直接予約できない秘境でも大半は予約サイトや旅行代理店のホームページから予約できるし、他のホテルとの比較も容易い。また、宿泊先への移動手段を調べるときもインターネットが頼りだ。公共交通機関であれば出発地と目的地を入力して検索すれば複数の経路が表示される。ローカル路線も基本的に網羅されているし、マップも連動するので乗り換えにかかる時間や徒歩のルートも事前に調べておける。自家用車での移動の際も、最新のマップで道路の混雑予想まで見れる。飲食店の情報もあわせて表示されるので、道中の食事の計画もあわせて練ることが出来る。

ほんの20年前まではこういった光景はなかった。旅行と言えばテレビ番組や旅行雑誌、パンフレットが情報源だったし、電話帳や時刻表、ロードマップは欠かせなかった。子供のころの家族旅行では父がそのあたりの手配をすべてやってくれていたが、今と違ってスマホで完結するわけではないので、知り合いの代理店に頼むか、電話でホテルや旅館を予約しなければならない。新幹線の乗車券購入の際は駅まで足を運んだのだろう。そういえば旅行前は父がロードマップをよく眺めていたことを思い出す。

20年前はまだ学生だったので比較的時間に余裕があったし、旅行先で詳細なプランを考えるのも楽しみの一つでもあった。だが今は事前にできるだけ綿密に計画を練っておかなければ、旅行の質そのものに影響を及ぼしかねない。公共交通機関は地方のローカル路線の本数が極端に減っていたり、主要な観光地であってもタクシーが捕まらない。また外国人観光客が多いとお店や施設は予約で埋まっていて、飛び込みでのワークショップや、イベントに参加することができないこともある。

インターネットでの予約は割引などお得なことが多かったが、気付けばインターネットなしでは満足に旅行を楽しむことすらできない。

テーマパークの情報格差はさらに酷い

ユニバやディズニーランドなど、テーマパークに至っては、もはや情報戦だ。

コロナ禍を経て、チケットの予約購入はインターネットが基本になった。現地でも販売しているが、土日や長期休暇はチケットが完売して現地どころかインターネットでも購入できない。また、入場してからのプランも重要で、入場してからどこに行くかを考えていては、目的を達することなく1日が過ぎてしまう。

https://www.usj.co.jp/web/ja/jp

例えばユニバなら人気のニンテンドーワールドに入るにはエリア入場整理券が必要だ。パーク内に発券所はあるが、アプリを使えばパーク内に入ってすぐに取得できるので、事前にアプリをインストールして準備をしていくのが一般的になっている。だがもしこのお作法を知らなければ、整理券の配布が終了してしまい人気のアトラクションに並ぶ機会すら与えられない、ということも起こり得る。

最近はユニバにも外国人観光客が戻ってきて、平日であってもかなり混雑している。幼児・子供向けのエリアを除けばどのアトラクションも1~2時間の待ちを覚悟しなければならない。またユニバは年間パスポートがなければ基本的に再入場はできず、食事の持込みも禁止されているため食事はパーク内で購入しなくてはいけないが、どのレストランも混雑しており食事をするにも一苦労だ。一部レストランは事前予約ができたり整理券が配布される場合もあるし、お店の場所や時期、イベントによって混雑状況も変わってくるので、こちらも事前に確認して計画に組み入れておく方がいい。

もちろん、ユニバの魅力はライド系のアトラクションばかりではない。ショーやグリーティング、季節に応じたデコレーションやイベントなど、長い列に並ばずに楽しめることも多い。入場するのに1万円近く払うのだから、人気上位のアトラクションに2時間以上並んで時間を使ってしまい、他を回れずに終わってしまうのはもったいない。また待ち時間は立ちっぱなしで疲れるので、うまく休憩がてらにショーなどを挟む、といった工夫をすれば、より充実した時間を過ごせるだろう。

そういった事前の準備だけでなく、入場してからも各ショーの開催時間やアトラクションの待ち時間を逐一チェックし、移動による時間と体力のロスを抑えることが出来れば、1日の満足度も変わってくる。パーク内に何か所かアトラクションの待ち時間が表示されているが、公式アプリや外部のサイトの方がタイムリー且つ手軽なので、スマホも生命線となる。

テーマパークにとってインターネットやスマホはただのお得な便利ツールではなく、使えることが当たり前でそれが前提となった設計になったといっても過言ではない。

旅行や娯楽の本質を忘れかけていないか?

だが、そうやって計画と効率を追い求めることに疑問もある。

入念な下調べを行って計画を立て、また常に最新の情報を追いかけてアップデートし続ければ、確かに無駄やロスは最低限となって効率を高めることが出来る。旅行や娯楽においてはコスパやタイパよく過ごせるだろう。だが旅行や娯楽の本質は効率でもコスパでもタイパでもない。楽しむこと、幸せを感じる事、休息すること、家族や友人との絆を深める事など様々だが、ノルマがあるわけではない。コストや時間対比で効率的に過ごせれば言うことはないが、それ自体は目的ではない。計画を守る事を第一にして本来の目的を見失っては本末転倒だ。

情報化社会、それを前提とした旅行や娯楽は確かにいろいろなことが手軽になり、また効率的にもなっている。だが、昔と今とでどちらが楽しかったのか、幸せだったのかと考えると、一概に今のほうが良いとは言えないのではないか。インターネットがなかったほんの20数年前、時間に追われず、持っている情報、与えられた情報で、その場の状況を楽しむことが普通だった。アクシデントや想定外は付き物で、計画は目安に過ぎない。あらかじめ立てた計画通りでなければ失敗、なんてことはない。

目的達成の手段はインターネット以外の至る所にあって、それは今も変わらない。

もうあの頃に戻ることはできないし、皆が当たり前に持っている情報を手放せば情報格差によって普通のことすらできなくなってしまった。インターネットを手放しで情報の海から距離を置くことは、もはや恐怖感すら覚える。

ただそれでも、少なくとも旅行や娯楽においては情報を追い求める事だけに執着するのではなく、本来の目的が何かを常に忘れないでいたい。

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