成功とはなにか

人生をマネジメント
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以前も触れたが、まだ「成功」に対して違和感を感じている。

私が読んだ自己啓発本の多くが、起業して収入が増えた状態を「成功」と表現してる。

確かにサラリーマンや公務員など、雇用される立場では飛びぬけて高い給料をもらうことは稀だ。年収1,000万を超えるのはほんの数パーセントであり、特別なスキルや資格を持つスペシャリストや、多くの部下を束ねる管理職など、簡単に代わりが利かない人材でなければ高い給料が支払われことはない。組織である以上、一部だけとびぬけて好待遇にするにはそれなりに納得のいく理由が必要なのだ。

会社に関わらず、多くの組織では2:6:2の法則、というものがある。上位2割が高いパフォーマンスを発揮して6割を率いることでその組織の目標を達成する。そのため上位2割は好待遇を勝ち取れるものの、6割はそこそこの給料しかもらえない。だがこの6割の中の人がみんな、能力や資質の面で上位2割に劣っているとは限らない。アサインされた仕事や上司、環境に恵まれなければ十分な成果が出せないことは多々あるし、才能を発揮できずに眠らせていることだってある。

そのため、転職や起業がその人のカラを破るきっかけになり、会社や顧客から評価されて収入が上がれば、それは「成功」と呼べるのかもしれない。お金に関するストレスが減ることは幸せへの第一歩だし、食事や娯楽など日々の楽しみのために使うお金が増えればより充実した人生を送れるだろう。

ただ、私の中の「成功」はそこがMAXであり、それ以上を求める気持ちは今のところないし、具体的なイメージが湧かない。

先日読んだ本には、個人で中古車販売をしていた青年がメンターとの出会いをきっかけに、新たに起業するサクセスストーリーが書かれていた。起業と言ってもIT系や発明ばかりではなく、身近な仕事やサービスを少し超えていれば需要がある。また思い入れが強すぎると客観的な評価・判断ができなくなるため、特別に好きなことで起業する必要はない、とのこと。結果的にその青年は企業に成功し、年収が数倍に跳ね上がる。

その時、メンターが青年に「お金を使って欲求を満たすことに罪悪感を感じる必要はない、稼いだ分を使うことで、経済は回っていく」といったアドバイスをした。そのため青年は毎月必ず一つ、今まで買うことが出来なかったものを買うようにし、家具や家電が少しずつ豪華になっていく。最終的には念願の高級車を買うまでに至った。

確かに多くの日本人にとっては「節約が美徳であり贅沢は良くないこと」という考えを持った人が多い。無駄なものを買うことはSDGsにも反する。だが私もこの1年で少しずつ考え方が変わり、楽しみを増やす、ストレスを減らすことは日々の幸せと充実に繋がるので、そのための出費を惜しむことをやめた。無駄も贅沢も、目的がはっきりしていれば悪い事ではないし、時にはあっても良いのだ。

だが、毎月好きなものを一つずつ買っていくと、そう遠くない未来に欲しいものがなくなってしまう。また買った商品を楽しむ時間がとれなければ、それこそ無駄になる。では不労所得を増やすことで働く時間を減らし、商品や娯楽、サービスを享受する時間を増やせばそれは幸せなのだろうか。ストレスや不安もなく悠々自適な生活を送る日々は「成功」と呼べるかもしれないが、「幸せ」とイコールではないように思う。

私にとっては「所属する」「承認される」「自己実現」のような高次な欲求を満たすことが幸せであり、その幸せな状態を続けられることが「人生における成功」だと考えている。もちろん「安心・安全」でありたいという根本的な欲求が満たされていることが前提なので、そのためには最低限の収入はあったほうがよい。また、幸せを享受するための時間と環境も重要であり、会社から評価されるために家族との時間や自身の健康を犠牲にした結果手に入れたものは「成功」とは呼べない。

欲しかったものを手に入れる、夢をかなえるというゴールを達成すれば「成功者」として見なされるだろう。だが重要なのはそのあと、幸せな状態を続けられるかどうかだ。

大谷翔平が約1,000億円でドジャーズと契約したが、契約金を手にすることは彼にとっての「成功」でも「ゴール」でもない。これから先10年間も、評価された分の成果を発揮し続けることが求められるのは相当のプレッシャーだろうし、想像しただけでも頭がおかしくなりそうだ。それでもチームの勝利への貢献やワールドシリーズ制覇という目標に向かっていくために、そのプレッシャーが必要だと考えたのかもしれない。また目標に向かって自己をさらに高める日々が、彼にとっては「幸せ」なのだろう。そう考えると1,000億円のうちほとんどが10年後からの支払いになるのも納得がいく。今、彼には野球以外に使うお金は不要であり、またその時間もないのだ。

「成功」なんてただのレッテルに過ぎず、周りからどう見られているかはどうでも良いことだ。重要なのは心の底で、自分がどう思っているか、ということ。まもなく2023年が終わりを迎える。せっかくなので、今自分は幸せなのか、自分にとっての幸せはなにか、そのために何をすればよいかを考えてみてはどうだろう。

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