塾代助成と所得制限から見えてくること

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大阪市では「習い事・塾代助成事業」というものがある。

子育世帯経済的負担軽減するとともに、こどもたちの学力学習意欲個性才能ばす機会提供するため、一定所得要件※け、市内在住小学5年生中学3年生5対象として学習塾家庭教師文化・スポーツ教室等学校外教育にかかる費用月額1万円上限助成する事業です。

https://www.juku-osaka.com/system/about_project.html/

2012年度に当時の橋本市長が始めた制度でこれまでは中学生が対象だったが、今年から小学5・6年生も対象となったことで来年から5年生になる娘にも先日事務局から申請書が届いたところだ。大阪市曰く、小学5・6年生まで対象を拡大すると約5割の子供が塾助成を受けられるようになったらしい。

我が家は2年前、長男が中学生に上がる際にもこの申請書を受け取っていて、その時点で所得制限によって助成対象外になることは分かっていた。むろん、娘も助成金が貰えない残りの5割側だ。ただ来年10月からは所得制限が撤廃され、二人の子供も助成対象になる。そこであらためて申請書に同封されていた現時点での所得制限ルールを確認した。「5割が助成対象」ということは、大阪市の子育て世帯の半数がこの所得限度内、ということだ。

所得制限の限度額表は大阪市のホームページにも載っている。

https://www.city.osaka.lg.jp/kodomo/page/0000596583.html

この所得制限限度額は年収から給与所得控除からさらに10万円を引き、それを1世帯で合計した金額が基準値となる。例えば以下パターンの場合、AさんとBさんの世帯だと402万円+157万円=559万円なので、どれだけ扶養親族がいても助成対象にはならない。AさんとCさんの世帯なら402万円+25万円=427万円で、子供が2人とCさんがAさんの扶養に入っていれ限度額の436万円を下回るため、助成対象になる。DさんとEさんの世帯でも基準額が384万円なので、こちらも扶養家族が2人以上なら助成対象だ。

<限度額計算パターン>
Aさん:年収570万円
 → 570万円ー(570万円×20%+44万円)ー10万円=402万円
Bさん:年収250万円
 → 250万円ー(250万円×30%+8万円)ー10万円=157万円
Cさん:年収90万円
 → 90万円ー55万円ー10万円=25万円
Dさん、Eさん:年収300万円
 → 300万円ー(300万円×30%+8万円)ー10万円=192万円

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1410.htm
子育て世代の半分が世帯年収650万円を下回っている

小学5年生~中学3年生までの子供のいる家庭の5割が習い事・塾代助成対象ということは、つまり世帯年収が650万円を下回っていて、親の一方がパートやアルバイトなどで扶養の範囲内で働いている、もしくは二人とも年収300万円以下ということになる。

世帯年収が600万円~650万円だと、税金を差し引けば手取りは500万円ほどになるだろうか。1か月で割ると40万程度なので、食費・光熱費・家賃・通信費で20万円程度かかり、残りの20万円で衣類や電化製品、学費等の貯蓄をするのに精一杯だ。マイカー購入や旅行、娯楽費は制限せざるを得ない。子育て世帯の半数がそんな生活をしているのだ。

幸せの価値観は人それぞれではあるが、日々の生活にゆとりがなく、いろいろなことを少しずつ我慢せざるを得ないのは辛い。浪費は良くないが、だからといって我慢も美徳ではない。子供と過ごすことのできる貴重な時間が我慢と制限ばかりなのはなんとももったいない。

給料が上がらないから仕方がない、仕事がない、というのは言い訳でしかない。各家庭で様々な事情があるとは思うが、配偶者の扶養に入ることにこだわるのはまず止めるべきだ。税金や保険料を多く払うことは将来の年金受給額にも関わってくるし、公共・行政サービスは税金で成り立っているのだから納税は無駄ではない。もったいないという話でもない。働けるうちは働いて税金を納め、地域行政を支える側に回るべきだ。大阪市内なら、少し探せば正社員の募集はすぐに見つかる。あれこれ条件を絞り過ぎず、まずはできることから始めてみればいい。働き方は多様化しており、シフト勤務の正社員雇用だってある。週数日は在宅勤務が可能な会社、業種も増えている。子供が小学5年生にもなれば、親は日中ずっと家にいる必要はないのだから、その時間を有効に使うことを考えよう。子育てにお金がかかるなら、なおさら収入を増やすことにより積極的にならなければならない。子供と一緒に過ごすことだけが重要ではなく、その中身をどう充実させるか。また、子育てが終わってからも親の人生は数十年続いていく。病気や高齢で本当に働けなくなる前に蓄えを作っておかなければ、育児が終わってもそこから死ぬまで我慢し続ける生活を送る羽目になる。

子供が生まれたら離職より、できるかぎり産休・育休でしのぎたい

子供が生まれた時に、産休を取るか離職するかも大きな分岐点となる。私も二人の子供の親なので、生まれたばかりの我が子とできるだけ一緒にいたい、という気持ちはよく分かる。まだ言葉もしゃべれず歩くこともままならないうちから保育園に預けて仕事をする、という罪悪感もある。だが我が子と自分の幸せ・将来を考えると、よほど一方の配偶者の高給である場合を除けば離職は悪手でしかない。子育てがひと段落してから再就職、という選択肢はあるが、産休・育休の制度が整っている会社であれば復職しやすいし、給料も一定額が維持されるので、出来るだけ離職を避けることを考えたい。

とはいっても子供が小さいうちは感染症にもかかりやすく、急な発熱・嘔吐で保育園から呼び出しがあったり、急きょお迎えに行ったり、病院に連れて行ったりと毎日がバタバタだ。そのため父親も積極的に育児に関わり、お互いにフォローしあうことが大前提だ。世帯年収を増やしてより安定した生活を送るためには、一方の親の努力だけではどうにもならない。子供が生まれる前には、この点についてしっかりと話し合っておくべきだろう。将来に備えた行動は早ければ早いほど、選択肢と可能性が広がる。

一度離職してしまうとスキルがリセットされ、社会人としてのベースが失われると復職時の給料にも影響がでる。復職することで生活リズムが変わる事も肉体的・心理的に負担となるため、可能な限りは仕事をつづけたほうが良い。もし離職するなら、子供が小学生に上がるタイミングなどで計画的に復職のための活動をしよう。前職のキャリアを活かせる良い仕事が見つかればそれでも良いし、全く新しい仕事を選択してもいい。20代後半や30代で再就職すれば、そのあと30年以上もその仕事を続ければ立派な専門家になれる。よほどの昇給・昇進を目指すのでなければ、10年のブランクなど誤差だし、こそ打でをした経験によって仕事でも可能性が開けることもある。子育ても立派なキャリアとして生かすことだってできるのだ。

ただこのとき、働きやすさや身軽さを理由に派遣やパートなどを選んではいけない。言われたことだけをこなす日々を繋げても成長は限られるし、それではキャリアにならない。逆に年を重ねる事で会社にとって不良債権化しかねないし、働きやすい=雇用しやすい=代わりが利く、という仕事から安定は得られない。多少今は大変でも、将来を見据えた選択をすべきだ。その観点からも、やはり離職→再就職よりは産休・育休のほうがメリットが大きい。

給付金や助成金は、貰わないほうが良い、という考え方を持とう

貰えるものはありがたく貰っておけばよい。だが、所得制限があるということは、その制限の中にいる=支えられる弱い立場、ということを自覚しなければならない。そしてその弱い立場をいくら給付金や助成金で補ったところで弱い立場を脱することはできない。それならば正社員となって収入を増やし、それによって所得制限から外れたとしても、トータルで使えるお金が増えれば生活は豊かに、そして充実したものに変わっていく。

給付金や助成金が貰えなくなるから収入を制限するなんて本末転倒甚だしい。そしてその状況に置かれている子育て世代が半数もいるという事実もまた恐ろしいし愚かしいと私は思うのだがどうだろうか。

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