10月に入って出向元・出向先ともに人事異動がなにかと騒がしい。部門やグループの新設・再編に伴って役職者の変更や昇格も発表されている。出向中且つ昇格資格を満たせていない私にはあまり関係ない話なのだが、それでも気になるのは「新たに管理職に昇格するのは年下」という事実だ。
新たに昇格した人たちの何人かとは一緒に仕事をする機会があり、その仕事ぶりについてはある程度知っている。その彼ら・彼女らが管理職になるという事実にまず驚く。正直なところ「あの程度」で管理職になれるのか、と思ってしまう。そして若手育成も兼ねた期待値を込めての昇格なのだろう、と自分を納得させる。
自分が昇格できていないせいもあるだろうが、私が知る管理職(出向元であれば次長、出向先ならグループ長)はかなり特別な存在だ。私が若手のころの上司はみなスーパーマンであり、恐れつつも憧れる存在だった。彼ら彼女らのあまりのハードワークぶりに、自分が彼らのように役職につく未来を想像することは難しかった。とはいっても、成長して成果を出し、評価され続ければ遠からず自分も管理職となるのだろう思っていたし、その自信もあった。だが、出向によってその本流から外れた現在の状況において、40代半ばで管理職になる、という道は限りなく細い。よっぽど特殊な事情がなければ、30代の成長株を差し置いて私が次長職につく、ということは現実的ではない。管理職という面に限れば、後進に道を譲る年代なのだ。
欲しいのは役職ではなく評価(給料)
次長などの管理職へのこだわりはない。名前が欲しいわけではない。ただ、仕事をする以上は実績に応じた評価をしてほしい。そして評価の絶対的な基準は給料だ。
出向し役職に就いていない私と、自社で役職に就く若手。私は管理職層に上がれていないので、給料は役職に就く若手のほうが多くなるのだろう。仕事の内容、自社と出向先とでの役割・評価指標も違うから、それだけでも給与体系は変わるのは当然だが、私の自社にとっての価値・評価・成果・能力は自社の役職者より劣っているとは思っていない。しかも私は今の職層から上がれなければ、今後基本給が上がることはない。この点に関してはどうしても受け入れがたい。
実績や成果とは別の部分で評価に差が出てしまうのなら、さっさと出向をやめて自社に戻るという選択肢もある。私が希望すれば、自社は何か動かざるを得ない。IT業界も人手は足りず売り手市場なので、40代社員の退職は会社として避けなければならない。そのため自社は、事業会社からの要求に応えられる私の代わりを用意する必要があるが、誰にでも適正があるわけではないし、自社も案件過多で猫の手も借りたい状況なので、交代要員を見つけるのはかなり難しいだろう。また、今のグループ体制は私の存在にかなり依存する状態となった。私がリーダーとなる前提で、他社からの3名の出向が維持されている。私がいなくなれば、とたんにグループは破綻するし、いくつかの重要なシステムの維持も難しくなる。現時点で、私はただの一人の出向者ではなく、他社とのハブとしての機能・価値も有していると思っている。
正直なところ、事業会社での仕事は日々刺激的でおもしろいので、今更自社に戻って開発を担当したいとは思っていない。キャリアの半分が出向なので、自社への愛情もそこまで深いわけではない。今の勤務形態や職場環境は良好なので、当面は出向を継続して今の仕事内容をキープしていたい。そのためには必要なのが「ランクアップ」なのだ。出向中でも次の給与体系にランクが上がれば、成果・評価に応じて昇給されるので、とりあえず私の望みが叶う。
昇給するためにできること
来年度のランクアップを勝ち取ろうとするならば、猶予はあと半年しかない。今のランクで昇給が頭打ちになったことを知ったのは1年前で、そのときからランクアップを意識し始めた。人事部にも相談し、ランクアップ条件と思われる研修にも参加した。だが今年度はランクアップはできず、それでもベースアップで上限いっぱいの評価をしてもらえたので、一旦は溜飲が下がっていた。だが今後もベースアップが続く保証はない。
昨年度の評価を振り返ると「出向者としての遠慮」があり「育成・マネジメント」のアピールが出来ていなかったので、ここ数カ月のグループ内のゴタゴタや体制変更は、絶好のアピールポイントになるはずだ。これを活かさない手はない。
ランクアップの判断は年度末の目標振り返りの後に為されると思うが、私が自社での評価テーブルにちゃんと載っているかも分からないので、ただ待っていては状況は変わらないだろう。下期賞与が近づいており1~2ヵ月以内には中間面談はあるが、行動を起こすのならば早い方が良い。そう思って、とりあえずは今のグループ体制や近況をパワポ数枚にまとめて人事部長に報告しておいた。
人事部長からはすぐに返事が来たが「なかなかタフな状況にあることは理解しました。おっしゃる通り、絶好のキャリアアップの機会になると思いますので、引き続きよろしくお願いします。」という簡素な返事が返ってきただけだった。なにかハレーションがあるかと期待したが、そう思い通りには事は進まなさそうだ。だがとりあえずサイは投げた。ここから中間面談、期末面談と人事部にあらためてランクアップの要望を伝え、その条件を引き出して昇給を勝ち取りに行くのだ。
私が出向することで自社にとってもメリットがあるのなら、ギブ&テイクで見返りを要求しなければならない。このままランクアップできず昇給せずに50代を迎えてしまえば、ますます取り返しがつかない。どうしても自社に戻らないと評価がされないのなら、いつまでも出向している場合ではない。あまり事を荒立てたくはないが、大人しくダンマリするつもりもない。
悪い方に転ぶ可能性もゼロではないが、それを恐れて留まってはいられない。まだ社会人人生の折り返しに過ぎず、評価が止まるのさすがに早すぎる。