ベースアップを単純に喜べない

仕事をマネジメント
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6月は年間賞与を支給される会社が多く、そしてまた前年度の人事評価結果のフィードバック時期でもある。会社によって様々ではあると思うが、評価者との個人面談がセッティングされてそこで前年度評価、それに伴う賞与支給額および今年度の給与金額の説明を受けた人が多いのではないだろうか。

今年は物価上昇の影響もあって、例年以上に政府から各社へのベースアップ要請が強い。従業員のつなぎ止め、エンゲージメントの向上、採用力強化といった様々な目的も加わって、多くの会社でベースアップが実施された。

個々の評価に応じて最大3万円の昇給

私の勤め先では一律固定金額ではなく個々の評価に応じて最大3万円を昇給する、という発表があった。私の昇給額は3万円だったので、会社の発表を信じるのならば「最大限の評価」をしてもらえた、ということになる。個人面談では評価者からも「最大限の評価をしたよ」という説明があった。

だが私はこういう時いつも疑っている。それがどれだけ特別なことなのか、評価される側では本当のところは分からないのだ。実はみんな一律で3万円昇給しているのかもしれない。体調を崩して休んだりなにか不祥事を起こした、といった明らかにマイナスな評価理由がある場合を除き、誰もが「最大限の評価」をされているのではないか。

「最大限の評価」をしたと言われ、実際に上限いっぱいまで昇給すれば嬉しくないわけがない。同じ昇給額であっても伝え方が変わればそこに特別感が生まれる。特別扱いされることで承認欲求が満たされるし、モチベーションが上がって自己肯定感も増すだろう。会社に対して恩を感じ、忠誠心に近い感情を抱く人もいるかもしれない。

私は、会社はそんな効果を狙っているのではないか、と勘繰っている。実際に最大幅の昇給をしているので実害はないし、なにも疑わずに結果だけを受け入れて喜ぶべきなのかもしれない。だが、誰かの狙い通りにその人の手のひらに乗って踊っているような感じがして面白くはない。また特別感が薄れて、自分がその他大勢に埋没するのも嬉しいことではない。

給与レンジの上限問題は変わらない

私はすでに今の給与レンジの上限に達しており、昨年の評価面談では「管理職扱いにならなければこれ以上給料が上がることはない」と通告された。そのため昨年度は「出向中でありながら管理職に準じた評価を得る」ための方法を出向元の人事部長に相談し、管理職候補者向けの研修に参加した。研修参加しても評価が上がるわけではないので、それで今年度から給与レンジがあがる、なんて簡単な話ではないし、実際に今年の給与レンジは変わらなかった。ただ、ベースアップによって給料は上がった。

「最大限の評価」を受けて給料が上がった、という事実自体は嬉しい。だがこのままだと来年以降も給料は変わらないままであり、根本的な解決にはなっていない。今年の評価面談ではそのあたりの説明をもう少し聞きたかったのだが、ベースアップを盾にしてごまかされてしまった感がある。

給与レンジの上限に達しているなら十分だろう、という見方もある。だがこれも、私の出向先での評価や成果に見合った額なのかどうかは分からない。給料は会社への貢献度に見合った金額を支払われるべきだが、他の人がどういった評価に基づいていくらの給料をもらっているかは非公開のため、私の給料の妥当性も分からない。それならせめて、毎年の成果と評価に応じて昇給してほしいし、昇給しないのなら何が足りなかったのか、会社は私に何を求めているかのフィードバックが欲しいのだ。

給与レンジの上限だから昇給しない、と片づけてしまえば、そこから何も得ることができなくなってしまう。足りない部分や課題に自分で気づけていなければ、それを克服することはできない。私はフィードバックを生かして日々成長し、それによって会社に貢献し、評価されて昇給する、というスキームにこだわっている。

今年もまた、給与レンジアップに挑戦中

給与レンジアップのために、少なくとも出向先からは「管理者としての行動」ができている、とにお墨付きをもらわなければならない。チームメンバ以外に新たな出向者への面談も実施しているが、それだけでは足りないだろう。

正解が決まっているような実作業はできるかぎりチームメンバに任せる。答えのない作業であってもメンバに主導権を与えて、自らはマネジメントに徹することが必要だ。適切な距離感でマネジメントを行いながら、私自身はビジネス戦略に近い案件を担当することで、高い視野を持って職務遂行できる能力を身に着け、そしてアピールしていかなければならない。

ベースアップは喜ばしい事だが、決して私の評価が上がっているわけではない。来年以降のことを考えれば、今年も手綱を緩めている場合ではない。

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