今日もどこかで誰かが怒っている。そして誰かが怒られている。そこには様々な背景があるのだろうが、しかし人が怒る理由は一つしかない。願望がかなわず、期待を裏切られたからだ。個人の勝手な期待感と現実とのギャップが怒りの感情を生むのだ。人は常に周りに対してなにか期待をしている。こうあってほしい、という願望を押し付けている。自分が怒ったり怒られた時のことを思い出してみると良く分かる。
・例1
子供が塾の宿題をなかなかやらないので、少し大きな声を出して注意した。この時私の中には苛立ち、怒りの感情が湧いていた。これは「遊ぶならやるべきことをやってからにしてほしい」「そもそもyoutubeはあまり見ないでほしい」「そろそろ自主的に宿題をやるようになってほしい」という私の期待・願望が満たされなかったからだ。
・例2
トースターの中にアルミホイルが敷いてあったので捨てたところ、嫁が怒った。パンを焼くときにアルミホイルを乗せると表面が焦げにくくなってふんわりと焼けるので、パン屋のパンを焼き直す際はたまにこの方法をとる。アルミホイルはそんなに汚れないので、嫁としては何回か使おうと思っていたのだが、それを私が捨ててしまったから予定が狂ったのだ。
アンガーマネジメントより大切なこと
怒りの感情をコントロールする、いわゆる「アンガーマネジメント」は現代社会において重要度の高いスキルの一つだ。本屋に行くと関連するビジネス書が沢山並んでいて、ネットでも様々な情報を得ることが出来る。例えば有名な対処法に「6秒ルール」がある。カッとなっても反射的に反論したりせず、少し間をおいて冷静になるのを待ってから行動に移せば、より建設的な対応ができるようになる、というものだ。
しかしどれだけ怒りの感情をコントロールできたとしても、怒ること・怒られることはお互い疲れるし心に負担となる。状況によってはコントロールしきれない場合もある。そのためできれば怒りの感情が湧かないほうがいい。火がついてから燃え広がらないようにするのではなく、そもそも火がつきにくくするのである。
コミュニケーション不足が怒りの源
期待と現実にギャップがあるから怒りが湧く。ということはそのギャップをできるだけ小さくすることが解決策となる。ではなぜギャップが生まれるのか、それは情報が足りないからである。
冒頭の例1でいえば、私には子供がどういった気持ちでいるかはわからなかった。もう少ししたら宿題をやろうとしていたかもしれないし、一人でやるのが嫌なので手伝ってほしかったのかもしれない。それなら私も小言を言うばかりではなく、見守る・寄り添って手伝う、という選択肢も取りえた。例2の場合は、私は嫁がアルミホイルを使いまわししようとしていたことを知らなかった。知っていれば捨てることはない。
つまりコミュニケーション不足が、期待と現実にギャップを作る最も大きな原因と言える。しかしギャップが生じてからでは、そもそも感情的になってしまいコミュニケーションをうまくとることが難しい。そのため日々できるだけコミュニケーションを大事にし、情報の共有に努めたい。またなんでも自分ひとりで判断するのではなく、相手や関係者の意見を確認する習慣、姿勢が大切になる。変に構える必要はなく、ちょっとしだ雑談や声掛けで十分だ。また自分ルールもできるだけ公表し、共有する。そうすれば相手もあなたに気を使ってくれて、あなたを怒らせる行動を慎むようになる。
相手に過度に期待しない事
もう一つ、自分が相手を怒らないようにするためのとっておきの方法がある。私もこの方法を実践し、心の平静を保つことに成功している。それは、そもそも相手に過度に期待しない事だ。あなたの周りの人たちは、当然ながらあなたではない。あなたにとって当たり前のことでも、その人にはそうではない。こうあるべきだ、こうすることが当然だ、と相手に期待しても、その通りに相手が動いてくれる保証はどこにもないのだ。だから相手に期待するのは、確実に相手が出来る範囲までとする。それ以上に相手がやってくれたらラッキーだ、と思うようにすれば、期待と現実のギャップは限りなく小さくなる。
仕事であれば、各自最低限の役割は決まっている。ただ相手の能力や意識によっては、その人がどういった行動をとるか、どこまでできるかには個人差があるだろう。そのため、いくらその人の役割の範囲内だからと言って、結果が期待できないことが分かっているのなら期待値はずっと低くしておく。そうすれば、期待と現実のギャップも小さくなり、低く設定した期待値以上の結果が出れば怒りが湧くこともない。それどころか相手に感謝の気持ちを抱くこともあるのだ。誰でも感謝されればうれしい。自己顕示欲が満たされるのでヤル気もでるし、感謝してくれた人にも嫌な気持ちはしないだろう。
出来ないとわかっている人になにか依頼して、結果できなくて相手を責めるなんて愚の骨頂だ。マウントを取りたいがための独りよがりの行動でしかない。お互いのためにならないし、精神衛生上良いことは何もないので即刻改めたい。
家庭においては、特に家事の役割分担は明確にはしておかないほうが良い。状況によっては低く設定された期待値すらクリアできないこともある。家事はお互いに助け合ってやるものなので、基本的には自分が主体的にやることを前提にしておく。すると家族の誰かが家事をやってくれれば、感謝の気持ちを持つことが出来る。食事を作るのは〇〇、と決めてしまうと、それが当たり前になってしまって感謝しなくなってしまう。
感謝の気持ちを持てば何事もうまくいく
仕事でも家庭でも、常に感謝の気持ちをもつことができれば怒ったり怒られたりすることなく、円満かつ順調に過ごすことができる。相手にも事情はあることを理解する。過度に期待しすぎず、コミュニケーションを密にし、相手を尊重し大切に思うことができれば、そもそもアンガーマネジメントなんて必要はない。
怒らない・怒られないことは、幸せな日々を過ごすためにはとても重要なこと。そのためにはアンガーマネジメントよりも「感謝」と「尊重」を大事にしたい。