ビジネスには「想い」と「戦略」が大事

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大阪はパン屋の激戦区だ。繁華街やビジネス街だけでなく、民家に紛れて平日しか営業していないパン屋もある。人気のパン屋はいつも店の前に行列が出来てる。

2年ほど前に嫁に誘われて、大阪のいたるところにあるパン屋を廻る「パン活(パン屋巡り)」を始めた。食べログやグーグルマップで人気のお店を見つけて出かけたり、SNSで情報収集をする。基本的にどのお店でも焼き立てのパン美味しいのだが、たまに感動を覚えるパンに出会うことが出来て楽しい。小麦粉の産地や酵母、パンの製法、種類など、思った以上にパンは奥深い。

ロシアのウクライナ侵攻や鳥インフルエンザ、その他物価高の影響でここ最近パン屋でも値上げが続いている。また繁華街・ビジネス街のパン屋は賃貸料も高いのだろう、平均300円超えのパンが並ぶ店も増えてきた。それでも街中にあるパン屋ならまだ300円を下回る額で買えるパンが多いので、平日の在宅勤務のランチとしてパンを2個、600円以内に収まるならコスパは悪くない。

以前は価格優先でスーパーに併設していた100円均一のパン屋によく行っていて、多いときは一人で5個も食べたりしていた。数や量で満足できていたころはそれでよかったが、40代半ばでそんなに食べたら胸焼けしてしまう。今なら2個で十分満足できる。

150円均一のパン屋がおいしくなかった

最近、近所に150円均一のパン屋がオープンした。地下鉄の駅から徒歩5分ほどの好立地だ。だが私の住む地域もまたパン屋激戦区であり、駅周辺や少し離れたところには別のパン屋がいくつも立ち並んでいて、どこも人気がある。それぞれ特色も異なるので、その日に食べたいパンによってお店を選ぶことが出来てとても便利だ。

そんな中でオープンした150円均一のパン屋の戦略が気になっている。パンの原価率がいくらかは知らないが、他が250円で売っているパンを150円で売ることができるというその理由は、

・利益を度外視している
・材料費が安い

のどちらか、または両方だろう。趣味を兼ねていてパン作りが好きなので赤字にならければよい、ということか。材料費も、安くて良いものを仕入れるツテがあるのか、またはただ単に安い材料を使っているのかもしれない。買う側からすれば、おいしいこと、安心・安全であることが重要だ。また安くて美味しいパン屋ならずっと営業してくれた方がありがたい。

百聞は一見に如かず、ということでさっそくに買いに行ってみた。想像していたよりも販売しているパンの種類は多く、また見た目はおいしそうだった。しかし残念ながら、2回目はないだろう。

好みもあるだろうが、少なくとも私はパン生地がおいしくないと感じた。カレーパンやあんぱんでさえ、生地に物足りなさを感じる。他のパン屋と比べてなにが違うのか実際のところはわからないが、パン屋ならではの特別感もない。良く言えば素朴だが、スーパーの小麦粉とドライイーストを使って作ったらこんな感じになるかな、という評価だ。正直、これで150円を払うのならスーパーやコンビニのパンを買った方が満足感を得られそうだ。

150円均一のパン屋の戦略

事業を始めるにはまず、戦略を立てなければいけない。その事業によって顧客にどんな価値が提供できるのか。協業他社と比較して自分たちの強み・弱みを分析し、勝ち目があるかどうかを十分に検討する。需要があるかどうか、なければ作り出せるかどうかも重要だ。価値があると思っていても、そこに需要がなければ評価されない。

では150円均一のパン屋は、どういった戦略を立てているのだろう。他のパン屋が1個200~300円なので、150円均一という価格は十分に魅力的だ。物価高の影響もあって、パン1個に300円は払えない消費者も一定数いるだろう。出来たてのパンをお手軽価格で提供する、という戦略なのか。

だが実際は、150円で勝負するために犠牲にしているものが多すぎるように思う。スーパーではなくパン屋を選ぶ時点で、誰もがそのパン屋に期待をしている。期待を上回る、もしくは最低限その期待に応えられないのであれば、パンを選ぶ意味がない。

また、現時点でそのパン屋には値段以外のストーリーを感じない。150円でパンを提供することにどういった想いやこだわりがあるのか。安心安全にこだわって余計な調味料を加えていないから、他と比べて素朴な風味になるのかもしれない。もしそうなら話は違ってくる。だが今はただの「150円で特別おいしいわけではないパン」を売る店に過ぎない。おそらくはただ「パン屋をやりたい」という自分勝手な「想い」でお店を開いただけだろう。

「想い」と「戦略」が大事

事業だけでなく、会社での仕事や日常生活において新しいことを始めるとき、「想い」だけではなく「戦略」を立てることがとても重要だ。ただ始めるだけなら必要な手続きを済ませるだけでいい。だが始めることが目的ではないのだ。そこから何かを得て本来の目的を達成するためには、始めたことが続かなければいけない。そのために戦略を考えて、出来る限り勝ち目のある計画を立てる。その通りに事が運ぶとは限らないので、チェックポイントを設けて定期的に状況を確認して計画を修正する。必要なら戦略自体の見直しを迫られることもある。そうしてようやく「想い」は実現に近づくのだ。

150円均一のパン屋がこれからどうなるかは分からない。私の想像よりも150円均一という価格設定に需要があり、そのお店のパンの味と値段に満足する消費者が一定数いれば、お店を継続することもできるかもしれない。私の口に合わなかっただけで、他の消費者にとってはとてもおいしいパン屋なのかもしれない。

私はパン屋でもなければビジネスの専門家でもないただの消費者の一人だ。だからこそ、あのパン屋には私の浅い考察に負けない「戦略」があってほしい。良い意味で期待を裏切って街のパン屋として定着してほしい。パン屋に限らず、個人経営でお店を開くこと自体はとても夢がある。あのパン屋は、誰かの夢が形になったものに違いない。それゆえ誰かの夢が潰えずに続いていくことを願ってやまない。

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